将来の消費を担う世代として、注目度を上げてきている「α世代(アルファ世代)」。
Z世代の次の世代と位置付けられ、2025年には全世界で20億人に達すると言われています。
歴史上最も人口ボリュームの多い世代となるα(アルファ)世代が、今後ビジネスの世界で大きな影響力を持つことは間違いありません。
そこで今回は、α(アルファ)世代ならではの特徴と、彼ら・彼女らに向けたマーケティングのポイントを事例付きでご紹介します。
長期間を見据えたマーケティング戦略や、今後のトレンドをつかむヒントとしてお役立てください。
目次
Z世代の次!『α世代(アルファ世代)』とは
Z(ゼット)世代の次の世代とされるα(アルファ)世代は、おおよそ2010年〜2024年生まれの世代を指します。
全員が21世紀生まれであり、2023年現在、幼少期や学童期を過ごしている子どもたちが当てはまります。
α(アルファ)世代(Generaion α/ジェネレーション アルファ)という用語は、オーストラリアのコンサルタント、マーク・マクリンドル氏が名付け親です。
同氏は、世界人口の増加に伴い、2025年ごろにはα(アルファ)世代が歴史上最大の世代になる可能性を指摘しています。
彼らの特徴には、親の大半がミレニアル世代(Y世代/ジェネレーションY)であることや、物心ついたころからウィズコロナの生活が染みついている傾向があることなどが挙げられます。
1つ前のZ世代と同じくデジタルネイティブに当てはまり、SNSや動画を通してさまざまな情報を常にキャッチ。
ゲームをはじめとした娯楽の情報にも、子ども向け・大人向けを問わず幅広く触れています。
そのため、楽しめる要素だけでは物足りず、知的好奇心を満たしたり、コミュニケーションツールになり得たりするコンテンツを求める傾向が強いと言われています。
【そもそも】Z世代(ゼット世代)とは
おおよそ1996~2010年ごろに生まれた世代をZ世代(ゼット世代)と呼びます。
2023年現在で10代前半~20代中ごろの年齢層を指し、これまでの若者とは異なる特有の価値観を持っていると言われています。
前述の通りZ世代は、インターネット環境やさまざまなデジタルデバイスに慣れ親しみながら育った「デジタルネイティブ」であり、情報収集、コミュニケーション、クリエイティブな活動など、目的に応じてデジタルデバイス・アプリケーションを活用することが得意なようです。
また、LGBTQをはじめとした多様性(ダイバーシティ)を当然のこととして受け入れており、自分・他者を問わず、それぞれの「自分らしさ」を大切にする傾向があるようです。
そのほか、年齢や属性にとらわれないオープンなコミュニケーションを好む、SDGs・サステナビリティへの関心が高い、効率を重視する意識が強い、などもZ世代に見られる特徴です。
α世代(アルファ世代)とZ世代の違い
α(アルファ)世代と1世代前にあたるZ(ゼット)世代の構成層は一部重なりますが、おおむね以下のように定義されています。
Z(ゼット)世代 | α(アルファ)世代 | |
---|---|---|
生まれ年 | 1996~2010年ごろ | 2010~2024年代ごろ |
2023年時点での年齢 | 10代前半~20代半ば | 13歳以下 |
α(アルファ)世代とZ(ゼット)世代の両世代ともデジタルネイティブであり、多様性を認める傾向が強いなど、共通点もしばしば見受けられます。
一方でα(アルファ)世代は、よりメタバースやSNSなどのバーチャル空間に対して親和性が高く、オンライン授業などの新しいジャンルや様式が導入された教育を受けている、といった点がZ世代との違いとして挙げられます。
また、「Z世代は、次世代のマーケットの中心を担う」と注目され始めて早数年が経ち、経済的に自立している層もいます。
一方、Z世代の次の世代であるα(アルファ)世代は、小学生以下の世代であり、彼らの消費は、親世代(ミレニアル世代/Y世代)が主導権をにぎっています。
Z世代の次として早くも注目されるα(アルファ)世代ですが、マーケティング施策のターゲットとして設定する際は、その親、ミレニアル世代のことも考慮する必要があるでしょう。
α世代(アルファ世代)とZ世代の中間、「Zalphas(ザルファス)」にも注目
α(アルファ)世代とZ(ゼット)世代は、どちらもインターネットに親しみながら成長したデジタルネイティブ世代です。
両世代に共通する特徴は多いものの、異なっている点もあり、世代ごとの特徴を明確に分けて考えるのは困難と言えます。
Z世代の中でもいくつかの層に分類があるように、α(アルファ)世代を「Z世代の次」と明確に断定するのは危険です。
そこで提唱されたのが、α(アルファ)世代とZ世代の中間層を示す「Zalphas(ザルファス)」という呼称です。
Zalphas(ザルファス)には以下のような特徴があると言われています。
- トレンドを追いかけつつも、クリエイティブな手段で自己表現が可能
- 倹約志向で環境意識も高い
- デジタルネイティブ世代ゆえに、よりフィジカルな体験が得られるアナログを愛する
- 繊細さ、ソフトさ、反発心、暗い気持ちなど、さまざまな感情を併せ持っている
α(アルファ)世代が12歳~13歳以下とまだ若いこともあり、今後α(アルファ)世代の特徴がさらに際立っていくにつれ、Zalphas(ザルファス)の捉え方も変化する可能性があります。
しかし、上記のような特性をある程度踏まえておくことは、α(アルファ)世代・Z世代間でグラデーションする価値観や特徴をさらに深く理解するのに役立つはずです。
α世代(アルファ世代)の特徴
α(アルファ)世代はZ(ゼット)世代との共通点が目立ちますが、α(アルファ)世代ならではの特徴もあります。
主な内容として、下記の項目に分けてご説明します。
- デジタルネイティブで、オンラインの交流にも抵抗がない
- 人種・性別・価値観などの多様性(ダイバーシティ)を受け入れ、尊重する
- SDGs・サステナブルなどの社会課題に対する関心が高い
- バーチャル空間を好む
- 従来とは異なる教育や教育手段で学んでいる
- コスパよりもタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する
- モノよりも体験を重視する
デジタルネイティブで、オンラインの交流にも抵抗がない
「デジタルネイティブ」はZ世代の特徴を示す言葉として多用されますが、α(アルファ)世代はさらに色濃くその様相を呈しています。
2007年にiPhoneが登場したさらに後、iPadやInstagramがリリースされた2010年以降に生まれているため、α(アルファ)世代にとってデジタルツールは当たり前の存在なのです。
幼いころからYouTubeやTikTokの配信動画を視聴し、SNS、アプリ、オンラインゲームをコミュニケーション・遊びのために多用。
成長するにつれて、AIやロボットを身近な存在として使いこなす人材になっていくことが予想されます。
また、デジタルネイティブである小学生は、学校の授業でもタブレットを使用しており、α(アルファ)世代はすでにデジタル機器を当たり前のように使いこなしています。
人種・性別・価値観などの多様性(ダイバーシティ)を受け入れ、尊重する
「ダイバーシティ」という言葉を頻繁に耳にしながら育つα(アルファ)世代には、多様な価値観を認め、人種や性別にとらわれない考え方や言動が目立ちます。
異なる人種・民族同士の両親から生まれたり、海外で育ったりした子も多いこと、LGBTQをはじめ、性的マイノリティとされる人たちの情報に触れやすい環境で育っていることなどが理由として挙げられます。
α(アルファ)世代の成長に従い、仕事、恋愛、家庭など、生活の中のさまざまな領域で、ボーダーレス・ジェンダーレスな振る舞いや考え方がメジャー化していきそうです。
SDGs・サステナブルなどの社会課題に対する関心が高い
α世代の親の多くは、ミレニアル世代(Y世代)に分類されます。
ミレニアル世代(Y世代)はSDGs・サステナブルなどの社会課題に対する意識が高いと言われており、そのような親から影響を受けたα世代も同様に、社会課題への関心が高くなる可能性があります。
バーチャル空間を好む
α(アルファ)世代の特徴として、バーチャル(VR)空間・メタバースや、アバターを通した体験を好む傾向も挙げられます。
新型コロナウイルス感染症の流行による外出自粛が追い風となり、ビジネスやイベントの場で急激にメタバースの導入が進んだことが背景として考えられます。
コロナ禍には、メタバース上で卒業式が開かれるなど、学校生活にもメタバースが取り入れられている様子がニュースになり話題を呼びました。
幼いころからメタバースなどに親しむ暮らしを送った結果、α(アルファ)世代が社会に出るころには、ビジネス・プライベートの両面でメタバースやVRの活用がより盛んになると予想されます。
ビジネス面においてのメタバースやVRの導入により、働き方も現代のそれと大きく変わっているかもしれません。
従来とは異なる教育や教育手段で学んでいる
2020年度から小学校で英語やプログラミング教育が必修化されたことに加え、コロナ禍でリモート授業が取り入れられるなど、α(アルファ)世代の教育環境には、今までとは異なる特徴が見られます。
タブレット学習、SNSを通した知識の取得、フリースクールの普及など、従来とは異なる多彩な学び方が浸透し始めており、α(アルファ)世代の学び方の変化に伴い、彼らの教育に携わるミレニアル世代やZ(ゼット)世代の働き方も変わってくるでしょう。
コスパよりもタイパ(タイムパフォーマンス)を重視する
費用対効果を意味する「コストパフォーマンス(コスパ)」に対して、時間対効果を意味する「タイムパフォーマンス(タイパ)」という言葉があります。
α(アルファ)世代は、自分が価値を感じられることに時間を使いたい、時間を無駄にしたくないという気持ちが強く、コスパよりもタイパを重視すると言われています。
例えばYouTube動画の倍速視聴、TikTokなどのショート動画を多く見る、運動や勉強中に「ながら聴き」できる音声メディアの活用などがタイパ重視の行動の代表歴な例です。
モノよりも体験を重視する
α(アルファ)世代は、高品質なデジタル環境や安価でハイクオリティな商品に囲まれて育っており、物質的な豊かさにはそれほど強い関心を抱かない可能性があります。
その一方で、新しい体験や自分の価値観と合う人との出会い、斬新なアイデアなどには興味があり、「モノ」の消費よりも「コト」を通した経験を重視する傾向があると言えるかもしれません。
α世代(アルファ世代)へ向けたマーケティングのポイント
α(アルファ)世代を狙ったマーケティングを成功させるためには、下記の2点を押さえることが重要です。
- α(アルファ)世代と、その親であるミレニアル世代の両方を狙う必要がある
- 興味関心が持続しないα(アルファ)世代へアプローチするアイデアが必要
- SNSなどのソーシャルメディアを活用する
- タイパ(タイムパフォーマンス)にすぐれた訴求方法を考える
α世代(アルファ世代)と、その親であるミレニアル世代の両方を狙う必要がある
α(アルファ)世代はまだ幼く、消費の当事者には当てはまりません。
そのため、α(アルファ)世代の子どもだけでなく、親の大半にあたるミレニアル世代(ジェネレーションY)の心をつかむサービスや商品を考案する必要があります。
1980~95年ごろの生まれを指すミレニアル世代は、環境負荷の低減や男女機会平等への意識の高さ、自身が価値を感じるものへの消費を重視する傾向などが特徴とされています。
また、物質的な豊かさよりも、特別感があったり、周囲とシェアできたりする体験のためにお金を使う、「コト消費」の傾向が強い点も特徴として挙げられます。
そのため、自分の子どもに関する消費に対しても、サステナビリティを意識したものや、魅力的な経験・知識を得られるサービスに対するニーズが高いと予想されます。
興味関心が持続しないα世代(アルファ世代)へアプローチするアイデアが必要
α(アルファ)世代をターゲットに設定したマーケティングでは、興味が持続しにくい彼らの特性も考慮する必要があります。
生まれたころからデジタルコンテンツに慣れ親しんでいるα(アルファ)世代にとって、大量の情報が流れてくる状況は当たり前のため、わざわざ自分から物事を調べたり考えたりする手間をかけにくい傾向があります。
「まず答えありき」の志向になりがちであったり、コスパよりも、かかった時間に対して得られる対価や満足度を指す「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する点も、特徴として挙げられます。
YouTubeなどの10分程の動画でも「長い」と感じ、知りたい情報が数秒の短尺動画ですぐに手に入るSNS・TikTokを好むなど、そのタイパを重視する価値観が色濃い世代です。
飽きやすく、タイパに重きを置く彼らの志向に合わせ、常に斬新なテーマを設定し続ける、成果の見えやすいコンテンツを用意する、といった、彼らの価値観の特徴をとらえた特別なアプローチが必要です。
SNSなどのソーシャルメディアを活用する
α世代はデジタルネイティブであり、各種SNSをはじめとしたソーシャルメディアに慣れ親しみながら育ちます。
1日のうち多くの時間をソーシャルメディアに費やすことも考えられるため、α世代向けのマーケティングを考えるうえでソーシャルメディアは特に重視すべき媒体と言えるでしょう。
現在のミレニアル世代(Y世代)~Z世代に人気のソーシャルメディアは
- YouTube
- TikTok
- X(旧Twitter)
- LINE
などですが、今後台頭するサービスやアプリを予想するのは難しく、全く新しいプラットフォームが誕生する可能性もあります。
マーケターは、α世代が関心を寄せる新しいサービスやアプリの情報をキャッチできるように、常にアンテナを張っておく必要があります。
タイパ(タイムパフォーマンス)にすぐれた訴求方法を考える
前述の通りα世代はタイパを重視するため、無駄な時間を要する長時間の動画広告などは最後まで見てくれない可能性があります。
YouTube・TikTokなどのショート動画や、スキップされにくいとされる音声広告を活用するなど、α世代の時間に対する意識を念頭に置いた訴求方法を考える必要があるでしょう。
α世代(アルファ世代)をターゲットにしたマーケティング事例
α(アルファ)世代をターゲットにしたマーケティングの事例として、以下の2つの商品をご紹介します。
いずれもα(アルファ)世代から人気を得ていて話題に上っている商品です。
- タカラトミー「ぷにるんず」
- メガハウス「マイイルミ ドリームカラー」
タカラトミー「ぷにるんず」
タカラトミーの「ぷるにんず」は、本体の穴に指を入れ、ぷにぷにとした触感のボタンを操作しながらプレイする新感覚の育成トイ。
液晶画面のキャラクターに、直接触れてお世話しているような感覚を味わえる”本物感”がα(アルファ)世代の心をつかみました。
ボタンを押すだけだった従来の育成トイに、まぜる・こねる・さわる、のアナログな体験をプラスした点が画期的。
タブレットやゲーム機に慣れ親しんだα(アルファ)世代に対して、斬新な体験を提供するおもちゃとして、親世代にも支持されているようです。
メガハウス「マイイルミ ドリームカラー」
バンダイナムコグループ・メガハウスの「マイイルミ ドリームカラー」は、自分だけのイルミネーションをつくれるホビーセットです。
5色のイルミピンを”イルミカセット”にさして、自由に図柄をデザイン。
カセットを本体に装着し、ライトアップさせて遊びます。
光の色や明るさのほか、点滅・ウェーブなど、光り方も選択可能。
見た目に楽しいだけでなく、本格的なクリエイティブ体験ができるおもちゃとして、α(アルファ)世代の子どもたちを魅了しています。
また、遊んでいるうちにものづくりやデザインの面白さに気付けることから、親世代からの評価も高いようです。
まとめ
デジタルネイティブでタイパ重視と言われるα(アルファ)世代。
今後マーケットの中心を担うとされるZ(ゼット)世代の次の世代として、早くも注目を集めています。
彼らをターゲットに据えたプロモーション・商品・サービスを企画する際は、α(アルファ)世代特有の価値観や生活環境を、十分に理解しておく必要があります。
サステナブル、ダイバーシティなど、α(アルファ)世代にとってもはや当たり前となっている考え方をベースにするのはもちろん、リアリティや分かりやすさに対する配慮も欠かせません。
また、実際にお金を払う親世代(ミレニアル世代/Y世代)にアピールできるかどうかも重要なポイント。
「コト消費」を重視する親世代の価値観を反映しつつ、子どもにとって有意義な体験や学びにつながる点をしっかりと訴求しましょう。
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