かつては物を購入する理由が「自分が必要としているから」「自分が所有したいから」だったことから、ここ十数年で消費者の心理に大きな変化が起こっています。
モノ消費からコト消費へと消費行動の変化を辿り、今新たに注目されている「プロセスエコノミー」。今、消費者は出来上がった完成品を求めていた時代から、商品が出来上がるまでの過程を重視するようになっています。

このコラムでは、最終的な完成品そのものよりも、その過程に価値を置くというプロセスエコノミーとは何なのか、その活用事例もあわせてご紹介していきます。

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消費者の感じる「価値」の変化

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「モノ消費」から「コト消費」への価値観の変容

物はたくさん所有していることがより良いことだと考えられていた時代から、近年では身の回りは最低限の必要なものだけに囲まれていたいと「断捨離」に励む人も多いようです。
特に欲しいものがないという人や、物を増やすのではなく体験することに投資したいという人が増え、「モノ消費」から「コト消費」へと人々の価値観が変容しています。

プロセスエコノミーとは

アウトプットエコノミーとの違い

これまでは消費者はプロセスの段階では課金(購入)せずに、商品が完成した状態で課金を行う「アウトプットエコノミー」が主流となる商品購入方法でした。例えば、楽曲を制作している過程は見せずに、消費者は完成した楽曲だけを買うという方法です。
しかし前述した新たな価値観の表れとして、商品が生まれていく過程でも消費者が課金するという新たなトレンドが今注目を集めています。
これはアウトプットエコノミーに対して「プロセスエコノミー」と呼ばれており、クリエイター・起業家としても知られる吉川健介氏(けんすう氏)が生み出したこの言葉は、当初インターネットを中心に話題になりました。
その後プロセスエコノミーに関する書籍が出版される等、一つのマーケティング手法として紹介されるようになると、ビジネスモデルとして新たな潮流となりました。

なぜプロセスが重視されるのか

段ボール箱に入った野菜

それではなぜ、すでにアウトプットされた商品よりそのプロセスが重視されるようになったのでしょうか。

プロセスが重視されるようになった原因としては、人々の消費心理に大きな変化が生じたことが挙げられます。
例えば、必要な物を近くの店で購入するという行動から、生産者や制作者への応援の気持ちから商品を購入するという消費へと変わってきています。
これは東日本大震災後、復興を応援する気持ちから生まれた消費に始まり、コロナ禍で苦戦を強いられた飲食店を応援する消費等、応援したいから購入する・投資するといった消費傾向が近年では特に強くなっています。

この消費行動は「応援消費」とも呼ばれており、サービス提供者のプロセスを応援するというプロセスエコノミーが支持されるようになった背景でもあります。消費者は商品そのものよりも、商品が生まれるまでのストーリー性に惹かれたため、消費に結びついたというものです。

また、Z世代に多く見られる傾向で、今までの「モノ消費」から自分が体験することを重視する「コト消費」に重きを置くようになったということもプロセスエコノミーを促進させた理由の一つとして考えられます。

令和の消費キーワードは「応援」「共感」

アンケート結果

引用元:https://www.japannetbank.co.jp/company/news2020/200227.html

2020年2月に株式会社ジャパンネット銀行が行ったアンケートによると、約6割の人が共感できるもの(こと)にお金を使いたいと答えており、半数以上の人は「モノ」より「コト」に投資したいという結果が出ています。
(参照:https://www.japannetbank.co.jp/company/news2020/200227.html
これにより、Z世代では当たり前になりつつある自分の推しへの消費(推し活)やふるさと納税など、誰か(何か)に応援・共感する消費を重視する人が増えていることがわかります。
さらに、3人に1人は応援消費を経験したことがあると答えているため、今後はプロセスエコノミーを視野に入れた戦略が必要になってくるかもしれません。

プロセスエコノミーの事例手法

アンケート結果

それでは、プロセスエコノミーを効果的に活用するにはどうしたらよいのでしょうか。
具体的な事例をご紹介していきましょう。

クラウドファンディング

商品開発やイベント開催など特定の目標を達成するための資金調達の手法のことで、不特定多数の人に資金提供を呼びかけ、共感した人々による出資によってプロジェクトを実行するという仕組みになっています。
SNSが浸透したことにより個人でのプロジェクト立ち上げや告知へのハードルが下がり、クラウドファンディングでの資金調達が活発になってきています。

オンラインサロン

Webサービスの一つで、月額制の有料コミュニティサービスで主催者であるオーナーと決済した会員だけが交流できる場となっています。限定的なクローズドコミュニティだからこそ交わせるオーナーと会員、会員同士などの密なコミュニケーションも醍醐味のひとつ。オンラインサロンだけで公開する情報もあり、ユーザーとしてはクローズドならではのお得感も味わえます。

オーディション番組

新たなアイドルグループがデビューする際に、そのメンバーをメディアなどで公開しながら決定していくオーディション番組のことです。デビューするまでの過程から自分のお気に入り(推し)を応援でき、アイドルデビューした後も長く応援するファンが多いのも特徴です。

ライブ配信サービス

YouTubeをはじめ、Pococha、17Liveなど今や選ぶのも迷うほど多くのライブ配信サービスが提供されています。
配信者への「投げ銭」制度があり、応援・共感するファンは視聴するだけでなく金銭的にも配信者を支えることができます。投げ銭だけで1時間に数十万円を稼ぐ配信者もいるほどです。

プラモデル制作

実は昔から一定数の支持を得ているプラモデル制作もまた、プロセスエコノミーのひとつのカタチであると言えます。
作り終えたものが欲しい人は完成品を購入すればいいのですが、完成品もさることながら、むしろ制作する過程そのものを楽しむためにプラモデルを購入しています。苦戦しながらもやっと完成した製品は、完成品とは比べものにならないほど愛着が湧くものです。

プロセスエコノミーの活用手法をご紹介してきましたが、今までは明確にカテゴライズされてはいなかったものの、プロセスエコノミー自体は実は以前から身近にあったのだということがわかります。

企業がプロセスエコノミーを活用するメリット

応援・共感をベースにした消費であるプロセスエコノミー。
今や多くの人にとって身近になった推し活もこの応援・共感につながる消費行動だと言えます。

現在、様々な商品・サービスにおいて、クオリティの高さでは他との差別化を図ることが難しくなってきています。
今までであれば最終形態の完成品だけが消費者に見えていたところから、その工程を明示することによって企業の成長過程が見えるため、そのような企業のストーリーは差別化を図る手法としても有効でしょう。
また、消費者はプロセスから応援しているので、アウトプットした商品を購入してすぐに忘れてしまうということが少なく、結果として長い間応援してくれるファン獲得につながることも考えられます。

その工程すべてが価値になるプロセスエコノミーは、企業の発展が期待できる新たなマーケティング手法のひとつだと言えるでしょう。

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