ライブ物販だけじゃない!アーティストグッズの販売機会を探る
ライブ物販だけじゃない!アーティストグッズの販売機会を探る

CDや配信による楽曲の発信や、ライブの開催で自身の「音楽」をファンに届けるアーティスト。
そのアーティスト活動を行う上で重要な収入源のひとつに、「グッズ」販売での売り上げがあります。
主なグッズ販売の機会としては、リアルライブでの会場販売や、ECでのライブ関連グッズ・ファンクラブ限定グッズの販売などがあります。
しかし感染症の流行により、リアルライブの開催自粛や規模縮小が余儀なくされ、グッズ販売の機会が奪われてしまいました。ライブグッズの売り上げがライブツアーの収益全体の大部分を占めるともいわれる中、グッズの販売機会が減ってしまうのはアーティストにとって痛手となっているでしょう。

そこで今回は、今後ニューノーマルになると考えられるグッズの販売機会・方法について考察していきます。
ライブ会場での物販以外に、グッズを販売する良いタイミングはあるのか。
これまで主流だったグッズ販売の機会と、今注目したいグッズ販売の機会を分析し、アーティストグッズ販売の好機を探ります。

アーティストにとってグッズとは?ファンにとってグッズとは?

なぜ、アーティストはグッズを売り、ファンはグッズを買うのでしょうか。
まずは、アーティストとファンそれぞれの視点から、「グッズ」の立ち位置を整理します。

【アーティスト・運営側にとってグッズとは?】

アーティストグッズの販売機会を探る

収入源

ライブでの収益を軸に活動するアーティストは、会場物販やECでのグッズ販売で収益増を目指します。
しかしリアルライブが制限される現在は、別の販売機会を探る必要があります。

ライブ会場での空間演出

同じTシャツやペンライトなどのライブの定番グッズ。
会場を一色に染め上げ一体感を生み出す演出に一役買っていますが、こちらもライブの開催が困難である現状では、主力にはなりがたいグッズの展開手法です。リアルライブの開催が難しい今は、オンラインライブ、ステイホームに照準を当てたグッズなど、展開するグッズの見直しの検討も必要です。

アーティストのブランディング

音楽やミュージックビデオ以外でアーティストの世界観を表現できるのがグッズです。
グッズのラインアップ・デザインのセンスもアーティストのブランディングに大きくかかわってきます。

【ファンにとってグッズとは?】

アーティストグッズの販売機会を探る

ライブでのお土産、記念として購入するもの

イベントへの参加体験としての課金

多くのファンが、ライブが始まる前のワクワク感や、大勢のファンが同じTシャツを着て一体となる空間を楽しみたいという想いでグッズを購入します。
ライブ会場では、グッズを購入する行為自体も楽しみのひとつとなります。
会場物販で購入できない現在では、グッズを買って楽しむ機会が減ってしまっています。

アーティストとファンをつなげるツール

応援・愛情の気持ちを表現する課金

「推し活」が世間に浸透し、コアなファンだけでなく“ライトなオタク”を自称するファンが増えました。
グッズを購入してアーティストに愛情を注ぐ消費行動は、アーティストとファンが繋がれるコミュニケーションの一環としてとらえられ、今グッズを販売するにあたり注意深く目を向けるべき要素となっていると考えられます。

関連コラム『推し活事情を学ぶ①推し活って何するの?編

アーティストにとってもファンにとっても重要な存在である「グッズ」。リアルライブの開催が難しい状況で、どのような機会にグッズを販売するべきなのか。今後ニューノーマルになると考えられる販売機会探っていきます。

今、注目したいグッズの販売機会・方法

これまでグッズ販売の方法として主流だったのは、リアルライブでの会場物販や、ファンクラブ限定グッズの販売(EC)などでした。
今後、会場物販に代わる販売機会や、ECでの販売を広げていく方法にはどのような選択肢があるでしょうか。
そのアイデアをご紹介します。

アーティストグッズの販売機会を探る

【グッズ販売の新たなタイミングを探す】

季節の移り変わりをファンと共有 “シーズングリーティング”

シーズングリーティングとは、新しい季節を歓迎する意味で使われる言葉。
K-pop界では、アイドルグッズのひとつとして、カレンダー、手帳、DVD、写真集などを含むパッケージ商品を“シーズングリーティング“と呼び、多くのアイドルグループから販売され、日本のファンも注目している人気グッズです。
パッケージごとにひとつの世界観があり、毎年異なるテーマを持って展開されるシーズングリーティング。アーティストからファンへ向けての「1年間ありがとう、今年も応援よろしくおねがいします」という気持ちが込められ、ファンとのつながりをより強くします。
また、年始に限らず、四季、クリスマス、バレンタインなど、年間のイベントに合わせ展開するアーティストもいて、ライブがない間でもファンを楽しませる機会を絶やしません。

グッズ販売の新たなタイミング
グッズ販売の新たなタイミングを探す

シーズングリーティングのグッズ一式(写真左)と楽曲をテーマにしたグッズ(写真右)

一曲一曲の存在をより特別に “楽曲”をテーマにしたグッズ

曲の歌詞やMVの世界観をデザインに落とし込んだ雑貨の製作することにより、ライブが開催できない間も楽曲を楽しんでもらう、最近ファンになった人にも過去作品を知ってもらうきっかけになります。

新曲のリリース時や、ベストアルバムのリリース時などのタイミングでグッズ化し、新曲発売や人気曲のヒットをより記念事化することができます。
K-popアイドルのBTSが「THEMED MERCH」シリーズとして過去曲のグッズを販売しています。

ひとくちメモ「Merch(マーチ)」とは?

マーチとは、企業やアーティストのオリジナルグッズのこと。
1980年代ごろからアメリカで、“商品”を意味する“Merchandise”を省略して“Merch”と呼ばれるようになったそうです。
企業やアーティストの“マーチ”を身に着けてコーディネートするのがトレンドで、海外アーティストのマーチを集めたECサイトや、遺文でマーチを作り、ストアを開設できるサービスなども登場しています
BTSの「THEMED MERCH」は「特定のテーマを持ったオリジナルグッズ」と訳すことができ、楽曲のテーマを形にしたマーチであると言えます。

音楽とは別の業界でグッズを販売する

グッズ販売の新たなタイミングを探す

アーティストグッズやライブグッズを販売する場と言えば、これまで述べてきたように、ライブ会場での物販やEC販売が基本でした。
新たな販売の場としてご提案したいのが、ファンやターゲット層になじみのある、音楽とは別の分野の店舗などで販売するという手法です。
参考になる事例として、2021年3月末から展開された3coinsとAWAとのコラボ企画をご紹介します。
8組のアーティストやレーベルのジャケットデザインを、バッグやマグカップといった雑貨に落とし込み、3coinsで販売するというもの。
各グッズには2次元コードが印刷されたカードがついており、スマホで読み込むとブラウザ上(AWA)でそのアーティストの音源を試聴できるという仕組みでした。
グッズの新しい販売手法でもあり、アーティストの認知度を上げる手法でもある、非常に興味深い企画となっていました。

『現代版ジャケ買い』を詳しく見る

【EC販売を強化する】

新たな購入体験 “オンラインガチャ”

ガチャマシンを回してランダム商品を購入する体験を、オンライン上で体験できるシステム。
購入すると、“ガチャをまわしてグッズが出てくる”という動画演出が流れるものが多く、同じECサイトからの購入でも“アイテムをカートにいれて購入する”のとはまた違った購入体験ができます。
“おみくじ”“チャンス”“ミステリーBOX”など、展開時期やイベントに合わせて「商品がランダムで出てくる」ことを表す言葉に置き換えれば、より多くのファンの目に留まるかもしれません。
商品のラインアップには、オンラインライブグッズはもちろん、上記の“楽曲のグッズ”との相性もよさそうですね。

『オンラインガチャ』 を詳しく見る

【グッズ化しやすくする手法を取り入れる】

人々に親しまれるマスコットキャラクター化

グループやメンバーをイメージしたマスコットキャラクターがあると、キャラクター単体のグッズや、SNSで使えるスタンプ、外部企業とのコラボで流行のきっかけになることも。
“メンバーがデザインしたキャラクター”などの付加価値があると、より愛されるキャラクターになるのではないでしょうか。

ファンとの一体感を生む“イメージカラー”

「推し活」では、推しメンのイメージカラーのグッズを集める、身に着けるなどして、愛情をアピールする傾向があります。
カラーが人に与える印象は大きく、ファンでなくても、「あのアイドルグループのピンク色の子かわいいね」などと興味を持ってもらえるきっかけになります。
また、イベントに来る際は黒い服で、というドレスコードを設け、ファンと一緒にイベントを盛り上げたバンドも。
ファンとのつながりを大事にしたい今、注目すべき要素のひとつだといえるでしょう。

おわりに

ライブが開催できない中、今後ニューノーマルとなりそうなグッズの販売機会と方法についてご紹介しました。 それぞれの要素を組み合わせることで、より強くアーティストの世界観をファンにアピールできる可能性があります。 また、今後ライブが自由に開催できるようになってからも、これらの手法を活かすことで、グッズ販売の収益をさらにアップさせられるかもしれません。 レコードからCD、CDから配信へと媒体が移り変わる音楽ですが、グッズはモノとして形に残ります。 音楽業会において、アーティストとファンそれぞれの視点から見てさまざまな役割を担うグッズの存在を、今一度見直してみる機会を設けてみてはいかがでしょうか。

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