近年激増している、漫画・アニメ・ゲームを原作とした舞台やミュージカル。
「2.5次元舞台」「2.5次元ミュージカル」と呼ばれているこれらの舞台ですが、具体的にはどんな内容で、どんな作品があるのでしょうか?

今さら聞けない「2.5次元舞台」について、代表的な上演作品や、舞台や舞台俳優の推し活事情について解説していきます。

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2.5次元舞台とはどういうもの?

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「2.5次元舞台」とは漫画やアニメ、ゲームを原作とした舞台やミュージカルのことを指します。
2.5次元舞台といえば、その代表的な作品には「刀剣乱舞」や「テニスの王子様」などが挙げられます。
2.5次元舞台と、それに出演する「2.5次元俳優」たちを推す推し活も、アイドル推し活と並んで非常に盛んです。

「2.5次元舞台」という言葉が生まれるより以前から、漫画を原作とした舞台上演は存在していましたが少年ジャンプ連載の少年漫画「テニスの王子様」を原作とした「ミュージカル『テニスの王子様』」(通称:テニミュ)がその草分け的存在となりました。
既存の漫画原作の舞台化と違ったのは、それまでにはなかった少年漫画のミュージカルであったこと、出演者がほぼすべて男性キャストで、その若手俳優たちにアイドル的な熱烈なファンがついたこと、などが挙げられます。
テニミュの上演が始まった2003年代頃から、現在の「2.5次元舞台」と呼ばれる漫画原作の舞台ミュージカルが次第に増えていきました。

そもそも「2.5次元」とは?

アニメやゲームの2次元の世界と、現実の3次元の世界の中間の意味で「2.5次元」と呼ばれる。
今では主に、アニメ・ゲーム原作の舞台や演じる俳優に対して使われることが多い。俳優の場合、キャラの姿に扮し、キャラそのものとしてふるまって見せるが、ディズニーランドやUSJのキャラクターキャストなどとは違い、俳優自身の普段の姿も隠さず、SNSの個人アカウントでも盛んに本人たちが写真更新を行うのが特徴的。

2.5次元舞台と、既存の舞台公演との違い

【2.5次元舞台の特徴】

  • 看板俳優や演出家など著名人による集客ではなく、原作の知名度に依るところが強い
  • DVD・Blu-ray、ライブビューイング、配信、キャストの肖像グッズなど、興行収益以外での収益モデルが確立している
  • キャラ≒俳優と捉えて推すファンが多く、無名の若手俳優にとっての登竜門になっている

2.5次元舞台・ミュージカルがオタク層に浸透しつつあった2015年以降は認知度がさらに高まります。
女性を中心とした日本刀・刀剣ブーム、博物館ブームを引き起こしたオンラインゲーム「刀剣乱舞」のミュージカル・舞台化が2015年から始まり、ミュージカルは「刀ミュ」、舞台は「刀ステ」として原作ファン・舞台ファンを増やしていきました。
社会現象ともいえるブームを生んだ「刀剣乱舞」の知名度もあり、刀剣乱舞ミュージカルの俳優たちは、出演キャラクターとしてテレビの音楽番組にも登場。これにより、2.5次元舞台と俳優の存在がより広く世間一般に知られるようになっていきました。

なお、「2.5次元ミュージカル」の名称は、一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会が管理する登録商標です。

2.5次元俳優

また、この人気を支える俳優たちは「2.5次元俳優」とも呼ばれており、2.5次元舞台・ミュージカルのほか、仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズなど特撮(ニチアサとも呼ばれる)ドラマにも出演しています。
これらの舞台や特撮ドラマに新人時代に出演した俳優の中には、人気と実力をつけたことで帝劇ミュージカルや映画・ドラマ俳優として全国的に知られるようになった人も多く存在し、2.5次元舞台そのものが俳優キャリアの登竜門にもなっています。

代表的な2.5次元舞台・ミュージカル作品

実際に2.5次元舞台といわれる上演作品にはどういったものがあるのでしょうか?
ここでは2.5次元舞台の中で知名度が高い作品や、草分け的存在となった作品など、特徴的なものをいくつか紹介していきます。

刀剣乱舞

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出典元:https://musical-toukenranbu.jp/

紅白への出演も果たした、2.5次元舞台の代表格コンテンツ

2015年のプレ公演から始まった「ミュージカル・刀剣乱舞」と「舞台・刀剣乱舞」。「刀ミュ」「刀ステ」と呼ばれて長く親しまれている2.5次元舞台の代表格です。
ミュージカルとストレートプレイ(※芝居)二軸で展開する舞台はそれぞれ同じキャラクターでもキャストやシナリオも分けられています。ミュージカル版のキャストは紅白歌合戦やFNS歌謡祭へも「刀剣男士」としてたびたび出演しており、作中歌でのパフォーマンスを披露しています。
また、2019年には舞台版のキャストを中心に起用した実写「映画刀剣乱舞」も公開。そのほか、始球式への登場など、さまざまな場での露出があり、2.5次元舞台の中で最も一般的な認知度が高いコンテンツとなりました。
また、刀剣乱舞ミュージカルは、パリや上海、香港などでの海外公演も行われており、世界に向けて「2.5次元ミュージカル」のマーケットを発信する役割も担っています。
原作の刀剣乱舞を知らなくても「刀剣男士」はテレビで見たことがある、という人もいるのではないでしょうか。

テニスの王子様

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出典元:https://www.tennimu.com/

2.5次元舞台と俳優のスタンスを確立した草分け的存在

2003年から始まった「ミュージカル・テニスの王子様」シリーズ。「テニミュ」の愛称で知られており、まだ2.5次元という言葉のないころに、少年スポーツ漫画のミュージカル化ということで、当初は原作ファンの中には困惑の声も少なからずありました。
しかし、初演から回を重ねるごとに評判は上がり、集客は増え続け10年以上続く一大ジャンルとなりました。
原作「テニスの王子様」は少年ジャンプ連載のスポーツ漫画ですが、ボールやラケットが物理的に燃える、テニスコートが破壊される、隕石が落ちて恐竜が絶滅する、などテニスの域を超えた作風で人気でしたが、その作風をミュージカル内でも活かした、勢いのある演出が特徴でもあります。
作中のキャラクター同様に、イケメン揃いの出演俳優たちには、キャラクターとしても俳優としても人気が集まり、プロマイドやポスターなどの肖像を使った公演グッズの販売も盛況となりました。
また本公演ミュージカルのほかに、年に1回ペースで、出演キャストが集結したライブコンサート「Dream Live」も開催。これは、本編で使われるテーマソングや劇中楽曲を歌って踊りファンサもする、ファンもうちわやペンライトを振って盛大に歓声を上げる、まさにアイドルコンサートのような夢のイベントです。この、本公演とは別にアリーナやドームを使ったスペシャルライブを開催する形式は、その後の刀剣乱舞ミュージカルなどその後の2.5次元舞台でも踏襲されるようになったスタイルです。
こういった点でも、漫画・ゲームを原作とした2.5次元舞台マーケットの収益モデルの礎を築いたのは、この「テニミュ」と言っても過言ではありません。

ヒプノシスマイク

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出典元:https://hypnosismic-stage.com/

本格ラップバトルで舞台を超えたライブコンサート演出

日本を代表するラッパーやアーティストが楽曲を手掛け、声優による本格的なラップ楽曲CDとしてリリースされ、女性を中心に熱狂的な人気を持つ「ヒプノシスマイク」。
アニメ・漫画・声優ライブと続いて、舞台俳優をキャストに起用した舞台化がされました。
この舞台は、ミュージカルとも芝居ともまた違い、キャストたちによる本格的なラップソングとダンスパフォーマンスを披露する、見ごたえのあるライブコンサート。舞台上では原作となる「ヒプノシスマイク」のキャラクタービジュアルも、キャストの肖像もふんだんに使用したパワフルなエンターテイメントステージは、それまではあまり2.5次元舞台を見なかった人をも魅了しました。

この「ヒプノシスマイク」の楽曲提供には、日本の著名なラップ・ヒップホップアーティスト、オリエンタルラジオの藤森慎吾、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔などが参加。さらに、CD購入による人気投票を行い、その結果発表には新宿アルタビジョンを使う、など派手なプロモーション方法や、実在するアーティストのようにキャラクターコンテンツを展開することでも知られています。

薄桜鬼

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出典元:https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/

殺陣アクション2.5次元舞台の先駆け的存在

いわゆる「乙女ゲーム」と呼ばれる女性向け恋愛シミュレーションゲーム「薄桜鬼~新選組奇譚~」を原作とした「ミュージカル・薄桜鬼」。
幕末の新選組をモチーフとした独自の世界観を持つ原作ゲームは、2010年代の乙女コンテンツブーム、女性を中心とした幕末ブーム(※)の火付け役ともなりました。
2011年には早乙女太一が土方歳三役で主演した舞台を上演。その後2012年からは若手俳優を起用した「ミュージカル薄桜鬼」のシリーズ上演が開始。「薄ミュ」として親しまれ、現在もそのシリーズが上演され続けています。
2003年から始まったテニミュによる2.5次元舞台コンテンツの確立に続き、薄ミュは、本格的な日本刀殺陣アクションを交えたミュージカル舞台としてファンに受け入れられました。キャラクターに扮して舞台上で歌って踊りながら殺陣アクションを披露するスタイルを確立した薄ミュは、その後2015年から始まる「刀剣乱舞」の舞台化にも少なからず影響を与えています。

幕末・新選組ブームはそれ以前にもNHK大河ドラマ「新選組!」や「燃えよ剣」などの影響で定期的に起きているが、2010年代のブームは大河ドラマ「龍馬伝」放送なども相まって、女性を中心に史跡を巡る「聖地巡礼」ブームなども同時に起きた。

2.5次元舞台以外の漫画やアニメ、ゲーム原作の舞台

2.5次元舞台と呼ばれる上演作品より以前から、さまざまな劇団やプロデュース公演では原作脚本に漫画やアニメ、ゲームが取り扱われることはたびたびありました。
例えば、劇団四季による「ライオンキング」や「アナと雪の女王」などのディズニーミュージカル、
宝塚歌劇団(特に宙組)での「戦国BASARA」、「逆転裁判」、「銀河英雄伝」、
最近では、帝劇による「王家の紋章」や、市川猿之助によるスーパー歌舞伎でのワンピース歌舞伎などが挙げられます。

こちらは、アニメやゲーム音楽のオーケストラコンサート「オケコン」のコラムでも述べていますが伝統芸能や既存の演劇において、技術や演出における新しい試みであったり、新規のファンを獲得するためのマーケット戦略であったりもします。
ただし、これらは2.5次元舞台としてはカテゴライズされておらず、マーケティング方法も狙うターゲット層も2.5次元ファン向けとは若干違います。ですので、上記で紹介した2.5次元舞台群とは分けて捉えておいたほうがよいでしょう。

推し活も盛んな2.5次元舞台

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「推し活」シーンにおいても2.5次元舞台・俳優の推し活はとても盛んです。

特に、最近の「刀ミュ」をはじめとする2.5次元ミュージカルでは二部構成をとる舞台が多く、第一部がミュージカルや芝居本編、第二部にはライブコンサートを行うパターンが見られます。この二部では、観客もペンライトや歓声を上げて楽しむことができるようになっています。そのため、2.5次元舞台の公演グッズには、ミュージカルや舞台公演にも関わらず、推し色のペンライトやうちわなどのコンサートグッズがラインナップされていることがほとんどです。

推しのキャラ(俳優)の肖像を使ったグッズも人気です。ブロマイドや缶バッジ、アクスタの多くはトレーディングタイプで、推しが引けるまで買う、推し以外のものはファン同士でSNS上で交換を行う、などの動きが見られます。

舞台沼と俳優推し活

あまり舞台観劇の習慣がなかった原作ファンが2.5次元舞台を観に行き、出演する俳優に推しができ、その後は推しの出演するほかの作品の舞台も観に行くようになる。この無限ループが発生するのが、舞台俳優推し活です。
また、同じ舞台演目でも、日によって俳優の演技も微妙に変化するのが生の舞台の醍醐味でもあります。
チケットも、前方席ならキャストの細かい動きや表情を、後方席なら舞台全体の演出や雰囲気を楽しむことができる。チケットさえ手に入るなら、気に入った舞台は何度でも観たくなる、これが舞台沼であり、俳優推し活をするとたいていの人がハマって抜け出せなくなるのです。

コロナの影響での配信上演

2020年以降は他のライブコンサートと同じく、2.5次元舞台の多くがコロナの影響で公演中止・延期が続きました。
対策を整えた2020年秋以降からは、無観客での公演配信や、有観客+配信で上演を敢行する公演も多く見られるようになってきました。
もちろん、生で見る舞台が一番楽しいものかもしれませんが、観に行きたくても遠方だったり、仕事や育児などライフステージ的に忙しくて観に行けなかったり、そういった事情で今までは観劇を諦めていたファンがリアルタイムで上演を楽しめるようになったのは、配信上演の大きなメリットです。
それ以前から、刀剣乱舞ミュージカルのように規模の大きな公演は、全国ツアー公演ののちの大千秋楽(最終公演)などでは映画館でのライブビューイング上映も行われていました。そのため、配信上演に対しても多くのファンは柔軟に対応し、むしろ上演してくれてありがとう、の意味で通販でグッズを購入する人も多く見られました。

2.5次元舞台の熱烈なファンの多くは、舞台や俳優を見たいだけではなく、その活動そのものを応援する傾向があります。

これは推し活全般でもいえることですが、コロナ禍で難しいなら延期してもいいからいつか公演を再開してほしい、続けてほしい、グッズ購入やチケット購入で自分が支援できるならできるだけ協力したい、という推しへの貢献意識を持っている人が非常に多いです。
熱心なファンのエピソードの中には、なかなか取れなかった舞台のチケットをやっと手に入れることができた矢先に、コロナの影響で上演が中止になってしまい、チケットの払い戻しをせずに記念としてそのチケットをそのまま保管したという話もあるほどです。

男性の舞台推し活はあるの?

女性ファンが多く、舞台化される作品も女性向けターゲットのものが多い2.5次元舞台。
もちろん、先述してきた舞台には少なからず男性ファンも存在し、女性と同じように舞台推し活をする人もいます。
では、男性ターゲットとなるコンテンツでの2.5次元舞台はあるのでしょうか?

代表的なのは「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」や「サクラ大戦」の舞台版がそれに近しいものといえます。
ただし、これまで解説してきた2.5次元舞台の俳優とは違い、アニメやゲームでキャラの声を担当した女性声優がそのまま舞台でのミュージカルでも同役を演じることが多い傾向にあります。
これは、アニメと担当声優によるリアルライブがリンクした「ラブライブ」におけるキャラ=声優、と近いメディアミックスの方法になり、その手法だからこそ作品ファンに強く支持されている側面もあります。
こちらは出演者が女性声優なのでファンは男性が多く、こういった舞台の場合「2.5次元舞台」「2.5次元俳優」とはあまり呼ばれず、単に担当声優が出演する「舞台版」と捉えられています。
もちろん、こうした男性ターゲットの舞台でも公演グッズには肖像グッズやペンライトなどがラインナップされています。
どちらかというと、「ラブライブ」や「バンドリ!」などのコンテンツにおける、声優出演のリアルライブと同じような推し活をする人が多いようです。
(女性キャストが多い「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」や「サクラ大戦」の舞台版ですが、男性ファンだけでなく、熱烈な女性ファンの来場者も多くいます。)

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オタクコンテンツで欠かせなくなった2.5次元舞台

NHK紅白歌合戦やFNS歌謡祭などテレビ番組にも2.5次元俳優たちがキャラクターとして出演し、一般的な認知度が上がりました。

興行システム・俳優・観客、と2.5次元舞台周りの環境が整った今では、原作が漫画・ゲーム・アニメどれであっても、ある程度の人気とコアなファンを獲得した作品は、ほとんどすべてに舞台化される可能性があります。
多くの作品の舞台版が、好評を得れば、シリーズ化して「刀剣乱舞」や「テニスの王子様」のように、人気俳優を輩出し、公演を継続していくことにつながっていくでしょう。
供給側になる俳優に関しても、声優に匹敵するほどに志望者は増えており、俳優養成所や専門学校では俳優コースのほかに「2.5次元俳優」専門のコースを設ける学校も出現しているほどです。

確立してから10年強の2.5次元舞台。
エンターテイメントの新しい形として、今後もさらに間口を広げて、さまざまな試みに挑戦するコンテンツが増えるのではないでしょうか。

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白峯アサコ

10年以上前にひょんな機会で観劇した、とある2.5次元舞台。
このときほぼ無名の新人で端役であったものの、非常に魅力的な演技をするので気になった若手の俳優さんがいました。
その1年後には、大河ドラマに出ていてびっくりし、その後どんどんテレビドラマや映画で頻繁に出演するようになっていました。
彼がスターダムに乗る直前を見ていたのだな…と、ちょっと感慨深い気持ちになりました。

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