Z世代の日常に溶け込みつつある「推し活」。
推し色、推しの名前、推しの概念モチーフ…
身の回りのモノコトを自分の推しで染めたいZ世代に自分でカスタマイズができるパーソナライズサービスが人気です。
そうしたZ世代をターゲットに、推し活ニーズをキャッチアップしたドリンクやグッズのカスタマイズサービスが増えてきています。
今回は、推し活ニーズを見出したパーソナライズ商品・サービス事例を紹介するとともに推し活ではどのようにして利用されているのかについても、解説していきます。
推し活需要が高まるパーソナライズサービス
文具やドリンクラベル、お菓子のパッケージなど、自分である程度デザインやカラーを選べるカスタマイズ商品。
カスタマイズできるサービスはさらに進化し、消費者側の好みや傾向を受けて情報や商品・サービスを提案してくれる「パーソナライズ化」が進んでいます。
以前から商品のカスタマイズサービスは数多くありましたが、自分好みにカスタマイズができ、自分の好みに合わせて調理・調合してもらえるパーソナライズ商品・サービスが今、Z世代の推し活シーンで活用されるようになってきているようです。
推し活ニーズに合致した名入れや色替えカスタマイズ
カスタマイズサービスの利用シーンは、一般的には、記念品やプレゼントとして自分自身や家族の名前や写真を入れることを想定したものでした。
一方、パーソナライズサービスは、自分の好みや傾向を伝えることで、自分に最適なものをAIや専門家に提案してもらい、コーディネートしてもらうものでした。
しかし、最近では、そんなカスタマイズ・パーソナライズ商品が【自分ではなく、推しの名前を入れたい。自分の解釈する推しのグッズを作りたい】という自分だけの推しグッズを作りたい推し活ニーズと合致し、推し活消費の場としても注目されるようになってきたのです。
また、パーソナライズ商品の中には、オンラインカウンセリングを行ってその人に最適な食品やサプリをサジェスト(提案)するサービスが見られます。
推し活ニーズを見越したパーソナライズサービスでもやはり、ドリンクや香水などで、イメージや好みを伝えることで、その道のプロがよりその人のニーズに合うものを選んで組み合わせてくれるものも登場しています。
パーソナライズ推し活商品・サービスの例
パーソナライズサービス、カスタマイズサービスの中から推し活を想定したor推し活に活用されているものをピックアップしてみました。
- 推し活専門店オシアド原宿|推しのプロフでティーソーダを作ってもらえる
- ハラジュク201cafe|推し色ドリンクをかわいいボトルで提供してもらえる
- The Label Fruit|推しの名前ラベル入りで推し色フルーツオレが楽しめる
- TOUCH-AND-GO COFFEE|推しの名前ラベルを入れたボトルコーヒーが作れる
- cake.jp|推しの誕生日ケーキをセミオーダーできる
- パーソナライズフレグランスScently|推しのイメージでオリジナル香水が作れる
- ネット香水専門店 celes 推し活|推しのイメージで香水をセレクト&調合できる
それぞれのサービスについて紹介していきます。
それぞれのサービスについて紹介していきます。
推しのプロフと希望カラーで作る推し活ドリンクの専門店
日本発の「推し活専門店」として登場した原宿のカフェ。
運営会社は紅茶専門店も展開しており、店頭で推しのプロフィールや希望の推し色などを伝えると、それに合わせた推し茶を作って提供してくれる。提供されるティーソーダは推しのアクスタとともに撮影できるよう、店内には撮影ブースも用意されている。推し文字アクスタや缶バッジなど推し活を盛り上げるオリジナルグッズの販売も行っている。
出典元:https://oshiado.base.shop/p/00001?utm_source=linktree&utm_medium=link
ハラジュク201cafe
推し活ドリンクやグッズを楽しめる原宿のおしゃれなカフェ
推しの名前を入れられるラテや、カスタマイズラベルを貼ったボトル入りのメンカラソーダ(※)もオーダーできます。メンカラソーダには人気が集中しているためか、日によっては当日注文ができず、前日までの予約注文が必要なほど。
セミオーダータイプのアクスタケースや文字入れができるマカロンなど推し活グッズやスイーツの通販も行っています。
(※メンカラ:メンバーカラーの略。推し色と同義語)
出典元:https://harajuku201cafe.com/
The Label Fruit
推しの名前ラベルや推し色も楽しめる、食べるフルーツオレ。
ラベルも味も自分好みにできるという特性から、ラベルには推しの名前を、フルーツの色をうまく選んで推し色にすれば推しドリンクを作ることができるとSNSでも知られるように。
おいしいフルーツオレであること、見た目がSNS映えしてかわいいこと、そして自分で中身のドリンクもカスタマイズできることが、Z世代の女性に刺さっているようです。
出典元:https://fruit.the-label.jp/
TAG COFFEE STAND(D)
ラベルのカスタマイズをしたボトルコーヒーのスタンド。
前述のフルーツオレと同じく、推しの名前をラベルに入れられる、と推し活市場に注目されました。
もともとのサービス開始時には、ファミリーやカップル向けのカスタマイズサービスを想定していたようですが、ラベルをカスタマイズすれば推しのドリンクが作れる!とSNSの口コミを通して推し活市場で認知が広まったと言われています。
出典元:https://tag-coffee-stand.jp/
cake.jp
IPコラボも行う、推しの誕生日ケーキオーダーショップ
テンションの上がる、カラフルでかわいらしいデコレーションケーキをオンラインでオーダーできるサービス。子供の誕生会から友達同士のパーティ・推し活(#本人不在の誕生会)まで幅広い世代に愛用されているようです。『呪術廻戦』『ONE PIECE』『クレヨンしんちゃん』などさまざまなターゲット層を狙ったIPコラボケーキも展開。写真プリントケーキにも対応しているほか、推し活定番スイーツのアイシングクッキーや韓国スイーツのトゥンカロンやパフェアイスバーなど、映えるスイーツ各種も販売しています。
出典元:https://cake.jp/
パーソナライズフレグランスScently
推しのイメージを細かく伝えて作るオリジナル香水ショップ。
オリジナル香水を調合してくれるサービス。普段使い用だけではなく、キャラの概念イメージや自分の香りの好みをオーダーシートに細かく記載して注文することで、調香師が監修したオリジナル香水を届けてもらえます。気に入った香りは繰り返し注文も可能。
推しキャラだけではなく、推しカップリングなど2人のイメージを組み合わせたオーダーにも対応してくれるそうです。
ネット香水専門店 celes 推し活
推しのイメージ香水をセレクトしてもらえるオンライン香水ショップ。日本フレグランス協会の資格を持ったプロのスタイリストがさまざまな香水から自分の好みに合わせた香水をサジェスト(提案)してくれるサービスですが、こちらも推し活対応しています。
推しキャラの名前やイメージをオーダー時に伝えると、それに合った香水を選んでもらえます。キャラのイメージがわからない場合は、キャラの名前を伝えることで、そのキャラについて調べて選んでくれるそうです。
体験を買うパーソナライズ推し活サービス
上記で紹介した事例の推しドリンクオーダーや、推し香水の調合では、セミオーダーの際に、推しのプロフィールやイメージ、自分が推しのどこを魅力に感じているのか、などを細かく伝えます。
筆者が実際にオーダーしてみたところ、プロがそれをドリンクや香水として具現化してくれました。
単にモノを買う、だけではなく、自分だけの推しのオリジナルグッズ、イメージアイテムを作ることができる体験を楽しむのも、推し活でのカスタマイズサービスの重要なポイントだと実感することができました。
推しドリンクオーダー
推し活専門店「オシアド」で推し茶作りにチャレンジしました。店内で渡される「推しのプロフィール」カードへ自分の推しの性格や魅力、名前などを書き込みます。
さらにお茶の色テイストを選び、推しのイメージとなる香りを属性グラフに書き込み、スタッフさんに渡します。
カードに書き込んだ情報を元に、スタッフさんが鮮やかなハーブティーソーダを作ってくれます。テイクアウトもできますが、店内には推し茶と推しのアクスタや推しぬいを一緒に撮れるフォトスポットも常設されていました。
友達と推しの語り合い、アクスタ撮影会などをすると楽しそうな、推し活専門店ならではの演出がされていました。
出かけたその場で友達と楽しみながらドリンクを作ってもらえるのが、こうした推しドリンクオーダーの魅力です。
推し香水オーダー
パーソナライズフレグランス「Scently」でオーダーをしてみました。オーダーシートには、推しの基本情報、性格、色のイメージ、境遇、隠された本性、ストーリー上での活躍、自分の思うそのキャラへの解釈などをめいっぱい書き込み注文。
約3週間後に届いた香水には、推しの赤と黒のイメージに合わせた、調香スタッフからのメッセージカードも、トップノート・ミドルノート、ラストノートに何の香りを入れたかの解説や、もらったオーダーの推しの魅力をどの香りでどう表現したかも記載されており、香水そのものの質はもちろん、自分で自分の香水をオーダーした充実感も楽しめました。
自分の推しのイメージをじっくり考えながらオーダーでき、届いたときにパッケージを開ける楽しみや、実際に香りをチェックしてみるワクワク感が香水オーダーの魅力です。
推しのプロデューサー気分を体験できる推し活
紹介した事例の中には、当初は推し活ニーズを見越していなかったサービスや商品だったはずが推し活ユーザーたちが「推しドリンク」作りに活用できることに気付いて店舗に足を運ぶようになったというケースもありました。
推し活には、推しグッズを手作りする、創意工夫で新しい遊びを作り出していく楽しみ方があります。
カスタマイズできるパーソナライズ商品は、そんな推し活での遊び方にぴったりだったのです。
カスタマイズ要素 | 推し活での選び方 |
---|---|
名入れ・日付入れ | 推しの名前・誕生日(推しの苗字+自分の名前、という人もいる) |
色・色合い | 推し色(メンバーカラー)やイメージカラー |
柄・モチーフ | 推しの概念や所縁のモチーフ(ウサギを飼っているのでウサギモチーフ、など) |
味・テイスト | 推しの印象をイメージ(元気系はパッションフルーツ、クール系はビターチョコ、など) |
香り | 推しの性格や背景(明るく元気→トップノート、本当は繊細→ミドルノート、で表現するなど) |
制作会社が行うキャラクターグッズ製作やコラボカフェ企画における、キャラ(や人物)のグッズやドリンクのイメージコンセプト制作をファン自らが、自分の解釈で制作して楽しむのが、推し活におけるパーソナライズ商品の活用方法です。
自分だけの推しの解釈を表現する、かわいいグッズを手作りしたい、作ったものをみんなに見せたい、
「どんなデザインにしようかな~」という自分の手でなにかを作る体験の楽しみ、発表の楽しみ
さらには、
「私だったら推しのグッズをこう作る」という
マネージャーやプロデューサーになったつもりで推しの企画製作を疑似体験する楽しみ
こうした心理が、パーソナライズ推し活サービスの利用背景にはあると思われます。
(これは決して最近になって出現したファン心理ではなく、昔から男女問わず各ジャンルの限界オタクに見られるファン心理です。
推しの何かに関われるなら関わりたいし、俺が推しをプロデュースしたいという願望があるファンは実は非常に多いのです。)
自分でカスタムできる推しグッズや推しドリンクの需要が高まったのは、従来ではディープなオタク活動だったものが、ライトオタク層も巻き込んだ「推し活」として一般的に認知されるようになったおかげでもあると考えられます。
ファン心理をキャッチアップした推し活消費促進
推し活消費が注目される中、「自分で選ぶことができるカスタマイズ商品」「自分の推し活や推しの解釈を表現できる体験商品」といったパーソナライズ商品・サービスがZ世代の推し活で存在感を増してきています。
Z世代を中心としたファンの推し活行動心理には、推しへの想いや、推しに対する熱量、自分なりの解釈といったものを表現したい欲求と推しとデートしたい、推しを自分の手でプロデュースしたい、といった疑似体験欲求が背景にあります。
そして、それらを体験できそうな商品やサービスを見つけるとチャレンジしていく行動力を持っています
推し活のファン心理をくすぐるようなパーソナライズサービスや商品は、今後も推し活市場の中で増えていくのではないでしょうか。
白峯アサコ
「私がPなら推しのグッズは絶対こうするのに~!」は、昔からオタクありがち発言でしたがそれがマーケティングやビジネスに活かせる時代なのだなあとしみじみしてしまいます。