Z世代へのマーケティングの一環として注目される、新たな消費行動モデル「EIEEB」。
本記事では、EIEEBモデルの概要から、背景にあるZ世代の特徴、実践的な活用ポイント、さらには先進的な企業の事例まで、幅広く解説します。
目次
Z世代へのマーケティングの鍵「運命の出会い」と「自己肯定感」
Z世代へのマーケティングでは、「運命的な出会い」と「自己肯定感」が重要な要素となっています。
Z世代は、商品との出会いを単なる購買行為ではなく、特別な体験として捉える傾向があるといわれます。
彼らは、スマートフォンを通じて常に新しい発見や「ときめき」を探し求めており、その過程で商品との偶然の出会いを期待していると考えましょう。
これを理解し、マーケティング戦略に取り入れることで、Z世代の心に響くコミュニケーションが可能になります。
例えば、SNSを活用した自然な情報の流れの中に商品を組み込んだり、商品を通じて自己表現や成長を促すメッセージを発信したりすることが効果的な戦略となります。
Z世代の新消費行動モデルEIEEBとは
EIEEBは、Z世代の消費行動を理解するための新たなモデルとして注目されています。
このモデルは、従来のAIDMAやAISASといった購買行動モデルに当てはまらない、Z世代特有の消費プロセスを表現しています。
EIEEBは、Encounter(出会い)、Inspire(ときめき)、Encourage(励まし)、Event(イベント)、Boost up(高め合い)の頭文字を取ったもので、Z世代の消費行動をより正確に反映しているとされています。
要素 | 意味 |
---|---|
E(encounter) | 運命の出会い(シンクロニシティ) |
I(inspire) | ときめき |
E(encourage) | 励まし |
E(event) | 購入はイベント |
B(Boost up) | ときめきを他人と共有して高め合う |
このモデルの特徴は、消費行動を単なる購買プロセスではなく、継続的な「ときめき」の循環として捉えている点です。
Z世代にとって、商品との出会いから購入後の体験共有まで、全てが自己実現や自己表現の一環となっているのです。
E(encounter):運命の出会い(シンクロニシティ)
EIEEBモデルの最初のステップであるEncounter(出会い)は、Z世代が商品や情報と偶然出会う瞬間を指します。
この「ときめき」は、単なる興味関心以上のもので、「インスパイア」の言葉が持つ「ひらめきや活力を与える」「可能性を引き出す」といった意味を伴っており、商品が自分の価値観や理想に共鳴する感覚を指します。
Z世代は、この段階で商品が自分自身や自分の生活にどのような意味をもたらすかを想像し、共感を覚えます。
I(inspire):ときめき
Inspire(ときめき)の段階は、Z世代が出会った商品や情報に対して「ときめき」を感じる瞬間です。
この「ときめき」は、単なる興味関心以上のもので、「インスパイア」の言葉が持つ「ひらめきや活力を与える」「可能性を引き出す」といった意味を伴っており、商品が自分の価値観や理想に共鳴する感覚を指します。
Z世代は、この段階で商品が自分自身や自分の生活にどのような意味をもたらすかを想像し、共感を覚えます。
E(encourage):励まし
Encourage(励まし)の段階は、Z世代が商品に関する情報をさらに深く探り、周囲との繋がりを通じて購買の決心を固める過程です。
この段階では、SNS上の口コミやレビュー、信頼できるインフルエンサーの意見などが重要な役割を果たします。
Z世代は、単に情報を得るだけでなく、その商品を通じてコミュニティとつながり、自己肯定感を高めたいと考えています。
口コミやレビュー、インフルエンサーの意見が、“購入者の背中を押す“という段階です。
E(event):購入はイベント
Event(イベント)は、Z世代にとって購買行為自体が特別な体験となることを示しています。
彼らは単に商品を手に入れるだけでなく、その過程全体を楽しみ、思い出に残る出来事として捉えています。
この段階では、購入方法や場所の選択も重要な要素となります。
Z世代は、自分にとって最もときめきを感じられる購入方法を選びます。
B(Boost up):ときめきを他人と共有して高め合う
Boost up(高め合い)は、Z世代が商品を購入した後、その体験を他者と共有し、互いに高め合う過程を表しています。
この段階では、Z世代は単に情報を共有するだけでなく、自分の体験を通じて他者にも価値を提供したいという欲求を持っています。
Z世代はSNSを通じて、商品の使用感や自分なりのアレンジ方法、商品を通じて得られた喜びなどを積極的に発信し、他人の目に触れさせることで共感を得たり、喜びや価値を共有しようとします。
なぜEIEEBが注目されるのか?Z世代の消費活動の特徴
EIEEBモデルが注目される背景には、Z世代特有の消費活動の特徴があります。
Z世代は1990年代後半から2010年代半ばに生まれた世代を指し、デジタルネイティブとして知られています。
彼らの消費行動は、従来の購買モデルでは十分に説明できない独特の特徴を持っており、それがEIEEBモデルの登場につながりました。
Z世代の消費活動には主に、以下の3つの特徴があります。
- 失敗・後悔を恐れる
- 自己肯定感の追求、自己顕示欲
- 多様な価値観の肯定
失敗・後悔を恐れる
Z世代は、情報過多の時代に生まれ育ちました。
彼らは幼い頃からインターネットやSNSに囲まれ、膨大な情報の中から必要なものを選び取る能力に長けています。
しかし同時に、この環境は彼らに「失敗・後悔を恐れる」傾向をもたらしました。
具体的には、Z世代は商品やサービスを選ぶ際に、非常に慎重な態度を取ります。
彼らは購入前に徹底的に情報を収集し、口コミやレビューを細かくチェックしたうえで、商品の購入を決断するのです。
E(Encourage)に深くかかわる心理です。
自己肯定感の追求、自己顕示欲
Z世代の2つ目の特徴は、強い自己肯定感の追求と自己顕示欲です。
これは、単に自分を肯定的に捉えるだけでなく、自分の価値を他者に認めてもらいたいという承認欲求も含んでいます。
Z世代は、SNSの普及により、常に自分を表現する場を持っています。
InstagramやTikTokなどのプラットフォームを通じて、自分の日常や趣味、価値観を発信することが日常的な行為となっています。
彼らにとって、商品やサービスの消費は、それを享受することへの満足だけでなく、「それを選んだ自分」という自己表現の手段としても機能しています。
E(Event)やB(Boost up)を通じて満足感に繋がっていきます。
多様な価値観の肯定
Z世代の3つ目の特徴は、多様な価値観を肯定する姿勢です。
彼らは、グローバル化が進んだ世界で育ち、インターネットを通じて様々な文化や考え方に触れてきました。
その結果、他者の価値観を尊重し、多様性を受け入れる傾向が強くなっています。
この特徴は、消費行動にも大きな影響を与えています。
Z世代は、画一的な商品やサービスよりも、個々人の好みや価値観に合わせてカスタマイズできるものを好む傾向があります。
また、社会的な問題に取り組むブランドや、多様性を尊重する企業の商品を積極的に選ぶ傾向も見られます。
E(encounter)、I(inspire)においてどのような施策を打ち出すかを考えるときに大事にしたい要素です。
Z世代向けマーケティングにおけるEIEEBの活用ポイント
EIEEBモデルを理解し、Z世代向けのマーケティングに活用する際の重要なポイントは以下の3つです。
これらのポイントを押さえることで、Z世代の心に響くマーケティング戦略を展開できます。
- 運命の出会いをイベント化|Z世代の記憶に残す
- 双方向性の情報開示|Z世代の自己肯定感につなげる
- 自己有用感の演出でときめきを継続|Z世代に選ばれ続ける
運命の出会いをイベント化|Z世代の記憶に残す
「運命の出会いをイベント化」するとは、Z世代が商品やブランドと出会う瞬間を特別な体験として演出することを指します。
これはEIEEBモデルの「E(encounter)」と「E(event)」の要素に対応しています。
Z世代は日常的にスマートフォンを通じて大量の情報に触れているため、単なる広告や商品紹介では印象に残りにくいのが現状です。
そこで、彼らの興味を引き、記憶に残るような特別な出会いの場を創出することが重要になります。
双方向性の情報開示|Z世代の自己肯定感につなげる
「双方向性の情報開示」とは、ブランドや商品に関する情報をZ世代に一方的に提供するのではなく、Z世代からのフィードバックや意見を積極的に取り入れ、相互のコミュニケーションを促進することを意味します。
これはEIEEBモデルの「I(inspire)」と「E(encourage)」の要素に深く関連しています。
Z世代は自己肯定感を重視し、自分の意見や価値観が尊重されることを求めています。
そのため、彼らの声に耳を傾け、それを製品開発やマーケティング戦略に反映させることで、ブランドへの親近感と信頼感を高めることができます。
自己有用感の演出でときめきを継続|Z世代に選ばれ続ける
「自己有用感の演出でときめきを継続」させるとは、Z世代が商品やブランドを通じて自己実現や社会貢献を感じられるような機会を継続的に提供することを指します。
これはEIEEBモデルの「B(boost up)」の要素に特に関連しています。
Z世代は単に商品を購入し、使用するだけでなく、その体験を通じて自己成長や社会との繋がりを感じたいと考えています。
そのため、商品やサービスを通じて、Z世代が自己有用感を感じられるような仕掛けを用意することが重要です。
EIEEBの要素を取り入れた企業のマーケティング事例
EIEEBの要素を効果的に取り入れた企業のマーケティング事例を紹介します。
これらの事例から、若者世代とのコミュニケーションや商品展開における重要なポイントを学ぶことができます。
サンリオ|推し活応援グッズやアプリの展開
株式会社サンリオは、若者世代向けに「推し活」を応援するグッズやアプリを展開しています。
2019年から販売開始した「エンジョイアイドルシリーズ」は、うちわケースやトレカホルダーなど、アイドルファンの活動をサポートするグッズで構成されています。
このシリーズは2024年2月時点で累計約830万個の出荷数を記録し、大きな人気を集めています。
さらに、2024年2月には推し活応援アプリ「おしきゅん」をリリースしました。
このアプリは、同じ推しを持つ人々でコミュニティを作り、予定を共同編集できる機能や、自分と推しの予定を一元管理できるカレンダー機能を備えています。
ユーザー同士のコミュニケーションを促進し、共通の興味関心を持つ人々のつながりを支援している点が重要です。
また、デジタルとフィジカルの両面からファン活動をサポートすることで、若者世代の日常生活に深く入り込んでいます。
カンロ|WEB CMで人気クリエイターや振付師とコラボ
カンロ株式会社は、自社商品「マロッシュ」のWEB CMで人気クリエイターや振付師とコラボレーションを行っています。
このCMでは、SNSなどで話題のイラストレーター「coalowl(コールアウル)」氏とボカロPユニット「キツネリ」を起用し、オリジナルキャラクター「マロッシュちゃん」と「マロッチュくん」が登場します。
さらに、ダンスの振付には"日本一のバズらせ屋"として知られるローカルカンピオーネを起用。
楽しげでついつい踊りたくなるような「マロッシュダンス」を披露しています。
若者世代に人気のクリエイターや振付師とコラボレーションすることで、ターゲット層の興味を引き、共感を得やすくなっています。
また、ダンスという参加型のコンテンツを提供することで、ユーザー自身が楽しみながら商品の世界観を体験できる仕掛けとなっています。
ロート製薬|自社の公式YouTuberの起用
ロート製薬株式会社は、自社の公式YouTuberとして「根羽清ココロ」を起用しています。
実はこの「根羽清ココロ」は、ロート製薬の社員でもあります。
彼女は、ロートの魅力や健康情報を発信するだけでなく、時には弟の「根羽清オト」も登場させ、より親しみやすいコンテンツを提供しています。
社員自身がYouTuberとして情報発信することで、企業の透明性や親近感を高めています。
また、健康情報やスキンケアなど、若者世代の興味関心に合わせたコンテンツを提供することで、自然な形で製品やブランドの認知度向上につなげています。
まとめ
EIEEBモデルは、Z世代の消費行動を「運命の出会い」「ときめき」「つながり」「購入はイベント」「ときめきを他人と共感」の5つの要素で説明しています。
Z世代の特徴である失敗を恐れる傾向や自己肯定感の追求、多様な価値観の肯定などを踏まえ、このモデルを活用したマーケティング戦略のポイントを紹介しました。
弊社トランスではZ世代向けマーケティングの企画立案はもちろん、EIEEBモデルを活用したノベルティグッズの作成も可能です。
オリジナルグッズをはじめとした自社の商品やサービス、プロモーションに関するご要望をお聞かせください。
ご相談内容に合わせて立案し、実現させることが可能です。
どうぞお気軽にご相談ください。
おすすめコラム
Z世代の次『α世代(アルファ世代)』の特徴とは|Z世代との違いやマーケティングのポイントを解説!
Z世代の次の世代と位置付けられる「α世代(アルファ世代)」は、2025年には全世界で20億人に達すると言われています。
そんなα世代(アルファ世代)の特徴と、消費行動を抑えたマーケティングのポイントを事例付きでご紹介します。
長期間を見据えたマーケティング戦略や、今後のトレンドをつかむヒントとしてお役立てください。
咲楽レイ
消費活動にも貫かれているZ世代の美学についてお届けしました。
世代間ギャップは、「共感」というキーワードによって埋められる気がしています。
公開日:
株式会社トランス