近年「ウェルビーイング」という概念が、SDGsに続いて注目されるようになってきています。ウェルビーイングを実現させるための取り組みはSDGsに通ずる点もあり、企業としての責任を果たすうえに、社内の環境改善や人材確保に役立つほか、マーケティングにも活用することができビジネスにも有益です。
この記事では、ウェルビーイングの意味や、取り入れ方、導入事例についてまとめます。
人事や総務、商品開発のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。
目次
ウェルビーイングとは
「ウェルビーイング(well-being)」とは、「健康」「幸福」などと訳される言葉であり概念です。
世界保健機関(WHO)設立時の憲章で初めて言及された考え方で、精神的・身体的・経済的・社会的などいろいろな面で良好・満たされた状態であることを指します。
ここでの「健康」とは、単に病気でないということではありません。もっと多面的で持続的な幸せのことです。
価値観の多様化や人権意識の高まりを背景に、企業が果たすべき社会的責任としてその大切さが改めて認識されています。
また企業が自社社員のウェルビーイングを追求することは自社にとってもメリットがあります。
社員のエンゲージメントを高めることや人材確保につながるからです。
さらにビジネス的な視点からも、消費者の幸せの価値観が多様化していることから、SDGsに続いて消費者へのアピールポイントとするためにも注目されています。
ウェルビーイングを企業やマーケティングに取り入れる方法
企業がウェルビーイングを自社の活動に取り入れる際には、2つの方向があります。
社内向けと社外向けの2方向に分けて考えることができ、それぞれ具体的には次のような方法が挙げられます。
企業が自社内の経営に取り入れる方法
- 社員が幸福であることをサポートする制度の導入(社員が受けられる研修や面談、福利厚生・サービスなどの提供)
- 会社全体でのコミュニケーション増加を図る方針の開示 など
企業の経営方針として、ユーザーへ提供するサービス内容や製品のポイントなどを打ち出すことはもちろん重要です。
しかしウェルビーイングの視点において重視されるのは、「社員」や、企業自らが幸福を追求すること。
企業が社員の健康・幸福を守ることで、持続可能な経営状態を作り上げます。
ビジネスとして社外向けのマーケティングに取り入れる方法
- 商品のコンセプトを、ユーザーのウェルビーイングに視点を変えてアプローチする など
例えば食品・飲料品の場合、ユーザーに訴求したいポイントとして思い浮かぶのは、味・香り・食感・成分など製品自体に焦点を当てたことが基本となります。
一方ユーザーのウェルビーイングに視点を変えると、“どんな場面で利用したいか”だったり、“利用した結果どうなりたいか”といった点に焦点を当てたコンセプトの商品がうまれます。
ユーザーのウェルビーイングを実現するために、商品がどのような役割を果たすのか考えてみるのがよさそうです。
どちらの方法でも、ウェルビーイングの導入はメリットがあります。次にメリットについて解説していきます。
ウェルビーイングを企業やマーケティングに取り入れるメリット
ウェルビーイングを企業やマーケティングに取り入れることにはさまざまなメリットがあります。
得られるメリットについて、社内向け・社外向けの2方向に分けてまとめます。
自社に取り入れる際の企業と社員のメリット
自社にウェルビーイングの施策を導入すると、社員の満足度が高まります。
その結果、社員の流出を防ぐ、モチベーションを維持できるなど人材確保や生産性向上、業績向上につながります。
社外向けマーケティングに取り入れる際の企業のメリット
ウェルビーイングの導入は社会的なアピールとして活用できます。
SDGsの取り組みはすでに当たり前となってきており、他社との差別化が難しくなってきています。
ウェルビーイングな視点でユーザーに寄り添い、精神的・身体的に幸せな時間を提供することで、他社との差別化を図り、ユーザーからの支持を得ることができます。
【ウェルビーイングの導入事例】企業の取り組み:企業→社員
ここからは具体的にウェルビーイングを取り入れている実例を見ていきましょう。
自社の経営やマーケティングに取り入れる際の参考にしてください。
下記の企業の取り組み事例をご紹介します。
- アシックス
- 積水ハウス
- トヨタ自動車
- 味の素
アシックス
出典元:https://corp.asics.com/jp/csr/wellbeing
「株式会社アシックス」は、日本発の大手スポーツ用品メーカーです。
スポーツにかかわる事業を展開している企業らしく、社員の健康についての取り組みを行っています。
健康状態を改善するためメンタル面・フィジカル面の双方からアプローチしており、自社開発の健康増進プログラム、セミナー、本社へのアトリウム併設と社員への開放、メンタルヘルス研修などを行っています。
積水ハウス
出典元:https://www.sekisuihouse.co.jp/diversity_inclusion/work_style_reforms/happiness/
「積水ハウス株式会社」は、日本の大手住宅メーカーです。
男性育休の推進、ICTを活用した柔軟な働き方「スマートワーク」、育児・介護の両立支援、復職支援などの各種制度を整備。
そのほか「女性活躍の推進」「多様な人財の活躍」「多様な働き方、ワーク・ライフ・バランスの推進」を3つの柱とするダイバーシティ推進などを行っています。
トヨタ自動車
出典元:https://global.toyota/jp/sustainability/sdgs/?padid=ag478_from_header_menu#/worker
「トヨタ自動車株式会社」は日本最大手の自動車メーカーです。
「幸せを量産する」ことを使命とし、ウェルビーイングの取り組みとして「トヨタ自動車 健康宣言」「安全衛生基本理念」に沿った活動を進めています。
具体的な施策として、健康づくり活動、メンタルヘルス対策、在宅勤務を可能にするFTL制度、時短勤務制度、介護・育児などの両立支援を行っています。
味の素
出典元:https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/aboutus/health/
「味の素株式会社」は、日本の大手食品メーカーです。
ウェルビーイングへの取り組みとして、セルフケアを通した社員の健康推進と各国各法人の現状に則した健康施策の推進を行っています。
具体的には、日本国内では健康情報の可視化のために従業員専用の健康管理サイト「My Health」や健康アドバイスアプリ「カロママプラス」を提供・活用しています。
【ウェルビーイングの導入事例】プロモーション:企業(商品)→ユーザー
次に企業がビジネスとして社外向けマーケティングに取り入れているウェルビーイングの事例を紹介します。下記の企業についてまとめます。
- アサヒビール
- NIKE(ナイキ塾)
- IKEA
- ロート製薬(ロートレシピ)
- カンロ(ハーバルグッド)
- ベントレーモーターズジャパン
アサヒビール
出典元:https://www.asahibeer.co.jp/whitebeer/
「アサヒビール株式会社」は、日本の大手ビールメーカーです。
同社の「WHITE BEER(ホワイトビール)」はウェルビーイング的な視点で作られた商品です。
心地よさや気持ちよさといった飲む人の気分や、飲むときの空間を重視して商品化。
キャッチコピーは、
「そっと心をほどいてくれるのは、美しい空と幻想的な時間。マジックアワーのように、心を満たすホワイトビール。」
アサヒビールといえば、“辛口、キレ”といった爽快な飲み口の印象が強いでしょう。
この商品は“時間”や“心”に着目し、ユーザーがビールを飲んだ時の幸せな気持ちや、ビールを飲みたい時間・景色を想起させます。
アルコール飲料業界では、ウェルビーイングの視点からテーマを考えた新商品や、リブランディングを図るなど、注目されている概念です。
NIKE(ナイキ塾)
出典元:https://www.nike.com/jp/nikejuku
「NIKE」はアメリカ発の世界的なスポーツ用品メーカーです。
日本法人のナイキジャパンは、学業に励む高校生のウェルビーイングの実現につながる取り組みとして、Web上のプログラム「NIKE塾」を提供しています。
心身ともにリフレッシュし集中力を取り戻すために、高校生を中心とした若い世代に「スタディブレイク」を提案。
スポーツに関わるブランドらしく、簡単にできるエクササイズやマッサージの動画を公開しています。
「スタディブレイク」の動画には、学生に人気のあるタレント、ダンサー、インフルエンサーなどが出演。
また、期間限定で「カラオケ館」を自習室として無料開放。
放課後にカラオケで勉強する学生独自の文化に着目した、学生生活に寄り添ったウェルビーイングで異色コラボとなりました。
IKEA
出典元:https://www.ikea.com/jp/ja/newsroom/range-news/20220801-vardande-pub994245d0
「IKEA」は、スウェーデンから世界に広がる家具や生活雑貨の量販店です。
同社の「ヴォールダンデ」は、マインドフルネスや瞑想など、心身を満たすウェルビーイングをテーマとしたコレクション。
自宅でリラックスするのにぴったりなガウンやポプリ、再生可能な天然素材使用の鉢カバーなど、心と体を満たしてくれるアイテムが揃っています。
ヴォールダンデはスウェーデン語で「思いやり」。アジア諸国のソーシャルビジネスとのパートナーシップから生まれたシリーズです。
ロート製薬(ロートレシピ)
出典元:https://www.rohto.co.jp/news/release/2022/1128_01/
「ロート製薬株式会社」は日本の大手製薬メーカー。
同社とカフェ・カンパニー株式会社の協同による「ロートレシピ」は、1人ひとりのウェルビーイングを叶える食事業の新ブランドです。
「おなかの底から元気になれる。」をブランドコンセプトとし、その人その時にあった食を提供、「美味しく、健康的で、サステナブル」な食の体験を目指します。
食事を仲間と楽しむことで得られる元気や、こだわった素材から得られる健康、フードロスや食糧危機などの課題にも目を向け、身体的、精神的、社会的にウェルビーイングであることを目指す企画となっています。
2023年1月には大阪府にフラッグシップ店舗をオープン予定です。
カンロ(ハーバルグッド)
出典元:https://kanro.jp/pages/herbalgood
「カンロ株式会社」は、のど飴やキャンディを中心に扱う食品メーカーです。
同社の新ブランド「ハーバルグッド」は、「糖から人生100年時代のWell-being(ウェルビーイング)をサポートする」がパーパス、「ハーブキャンディでウェルビーイングな毎日をサポートする」がコンセプト。
「今日もHave a good day」のキャッチコピーのもと、日々の小さな幸せにつながるキャンディとなっています。
最初に発売となった2商品は、腸活サポートと免疫ケアに役立つ機能性表示食品のハーブキャンディです。
ベントレーモーターズジャパン
出典元:https://www.bentleymotors.jp/
ベントレー・モーターズはイギリスの高級車の製造・販売会社です。
同社はアニモカブランズ株式会社とコラボレーションでポップアップショールームを北青山にオープンし、自社のウェルビーイングのコンセプトに基づく特別な体験を提供する場として活用。
このポップアップでは、「ウェルビーイング・プログラム」として、最新の脳波計測技術を使用した脳波を測定。
測定結果に合わせた最適な周波数での入眠音楽を提供しています。
また、招待制ディナーの開催や、ブロックチェーン技術・NFTの活用など、「自動車」以外の多方面からユーザーを楽しませる企画が展開されます。
まとめ
現在の社会情勢・風潮が人々のマインドに影響し、私たち1人ひとりにウェルビーイングが必要とされるようになりました。
それに伴い、多くの企業で自社の社員のためにウェルビーイングが経営方針に取り入れられつつあります。
さらにビジネスとしても、新サービスの提供、商品のイメージ刷新やユーザーの新しいニーズに応える新商品のコンセプトなどに活用されています。
これからキャンペーンや商品にウェルビーイングを取り入れる場合、具体的にどのような例が考えられるでしょうか?
サステナブルな素材を使用したグッズや、快適で心地よい時間を過ごすのに役立つ企画などが挙げられます。
キャンペーンやノベルティなどの販促企画のテーマを、ウェルビーイングの視点から考えてみてはいかがでしょうか。
ターゲットの健康・幸福な状態を想像することで、ユーザーが求める企画が生まれるかもしれません。
トランスではさまざまなキャンペーンや、ノベルティグッズ、オリジナルグッズ等の企画開発をしています。
ウェルビーイングを取り入れたキャンペーンがしたい、オリジナルグッズの作製をご希望される場合は、ぜひお気軽にご相談ください。