新型コロナウイルス感染症の影響を受けた外出自粛の風潮もあり、仮想空間上でアバターを操作してリアルな遊びや買い物さながらの体験ができるVRイベントが注目されています。その中で世界最大級のイベント「バーチャルマーケット」では多数のデジタルアイテムやリアル商品の売買が繰り広げられ、国内外で幅広い人気を獲得。商品プロデュースやマーケティングの新しい場として、多くの業種の企業からも参入の動きが見られます。
目次
バーチャルマーケットとは
バーチャルマーケットはVRによる仮想空間・メタバース上で3Dデータ商品やリアル商品の売買が行われるイベントで、VR法人のHIKKYが運営。VRマーケットイベントの中で最大数のブースを集めたとしてギネス世界記録™の認定も受けるなど、注目されています。
バーチャルマーケットの仕組み
バーチャルマーケットは出展者、来場者がメタバース上でやり取りし、作品の展示・鑑賞・売買が進められます。あらかじめ出店申し込みをしたクリエイターや企業が仮想空間上に3D作品やリアルな商品の3Dモデル展示ブースを展開。消費者はメタバース上に設けられたまちで実際にショッピングをしているような感覚を楽しめます。展示された3Dアバターや3Dモデルは自由に試着などしたり、商品購入したりもできます。
バーチャルマーケットが注目される理由
バーチャルマーケットはVR技術やIoTなどの普及により世界的に身近になってきているVR空間を活用した経済・文化活動の場として、注目されています。昨今は新型コロナウイルス感染症による外出自粛の風潮の中で、消費者が自宅にいながら外出の疑似体験や実際の買い物ができる空間として、さらにニーズが増大。出展者にとっても、実店舗以外の新たな販路やショールーム空間の獲得、メタバース事業参入への機会となっています。
元々はクリエイターの作品発信やバーチャル空間上でのリアルな生活・経済・文化圏創造を目的に、2018年に初開催。Twitterトレンドで1位を獲得するなど話題を集め、以降はウォルト・ディズニー・ジャパン、Google、トヨタ自動車など企業の出展も目立つマーケットフェスティバルに成長しました。日本発祥のイベントながら、昨今は来場者の約半分が海外からのアクセスになっています。
過去のバーチャルマーケットの様子
出典元:https://winter2021.vket.com/
バーチャルマーケットは2018年8月~2021年12月に7度開催。アバターや3Dアイテムを創作するクリエイターのほか、アパレルや百貨店などさまざまなジャンルの企業によるブースが開設されました。ショップの中でスタッフアバターの接客を受けたり、商品の3Dモデルを手に取ったりなど、リアルなマーケット会場での行動が体験できるバーチャル空間を演出。ほかにもミュージシャンのライブパフォーマンス会場のバーチャル体験が楽しめるなど、多彩なサービスが展開されました。クリエイターやイノベーター、テクノリストのほか、一般の消費者など100万人以上の来場を記録しています。
販売された公式グッズもリアル商品と3Dの商材が販売されました。3D商材では3DモデルのキャップやTシャツなどアバター向けの衣装や小物、リアルグッズでは記念Tシャツやロゴタオル、缶バッジなどがあります。
8月には「バーチャルマーケット2022summer」が開催予定
出典元:https://summer2022.vket.com/world/2
2022年8月13~28日には、「バーチャルマーケット2022Summer」が開催されます。メタバースやバーチャル空間への関心が急速に高まっている現状を受け、あえてテーマを「原点」に設定。運営するHIKKYは変化の激しい時代の中で原点に立ち戻り、進化と発展を続けるというメッセージを発信しています。
今回はニューヨークと大阪のまちを仮想体験できる「パラリアルニューヨーク」「パラリアル大阪」が開設され、企業ブースの出展会場となります。
参加方法&楽しみ方
バーチャルマーケット2022Summerには、パソコンがあれば気軽に来場できます。VR機器・ゲーミングPCからVRChatやSteamを登録・インストールしてログインすれば会場に入場可能。一部スマートフォンからもURLをクリックするのみで入場できるブラウザ会場が設けられる予定です。会場ではまち歩きやショッピング、乗り物に乗る、ライブに参加するなどバーチャル空間でさまざまな体験を楽しめるほか、参加者間で音声のコミュニケーションを取ることもできます。
出展を希望する個人や企業は世界観や仕様の異なる複数のバーチャル空間の中から展示会場を選んで申し込み、抽選を経て入稿します。入稿にあたってはウェブサイトのマイページからサークル登録した後、Unity HubをインストールしてUnity2019のプロジェクトを作成、各種必要パッケージをインポートしていきます。
出展予定の企業
バーチャルマーケット2022Summerにはおなじみの企業や自治体なども出展します。JR西日本は関西初のメタバース上の駅「バーチャル大阪駅」を展開。関西空港にアクセスする特急「はるか」への乗車や広場でのライブ参加、駅ナカ店舗でのショッピングを体験できるバーチャル空間を演出します。
また泉佐野市がパラリアル大阪の空港エリアに出展するブースで公式キャラクターやゆるキャラの3Dアバターによる出迎えや、地元の特産や魅力をアピールするバーチャルパフォーマンスを展開。人気の高いふるさと納税返礼品の「お肉・お米・ビール」、定番人気の「泉州タオル・水ナス」などを3Dモデルで展示し、その場でふるさと納税寄附サイトへの誘導も図ります。
焼津市もパラリアル大阪内の空港を模したエリアでPR動画やふるさと納税の返礼品の紹介を行うブースを展開。焼津市の有名なマグロをアピールし、「バーチャルマグロ解体ショー」を披露します。
バーチャルマーケット以外にもバーチャルイベントは開催されている
バーチャルマーケット以外にも、昨今はさまざまなバーチャルイベントが開催されており高い関心を集めます。話題性の高いバーチャルイベントとして、以下が挙げられます。
- TOKYO GAME SHOW VR 2021
- NEOKET
TOKYO GAME SHOW VR 2021
ゲームファンから大きな支持を集める「東京ゲームショウ」のオンライン版イベントとして2021年9~10月に開催。海や空に浮かぶバーチャル会場が開設され、新作ゲームの体験や公式放送シアター、公式ショップ、企業ブースが展開されました。VTuberによる接客やゲームキャラクターなどのアバターコスチューム販売といったさまざまな企画が進められ、オンライン上で商談ができるシステムも活用されました。
NEOKET
バーチャル空間で同人誌のクリエイターとファンが交流するオンライン即売イベント。エモートやボイスチャットによって、クリエイターと来場者、または来場者同士で交流したり、商品の立ち読みや購入品の持ち歩きもバーチャル上で体験できたりする空間を演出。リアルな即売会さながらの行動を楽しめるイベントとして、同人誌ファンやクリエイターからの支持を集めています。
バーチャルイベントの今後
2022年5月に行われた世界経済フォーラムでも、メタバースが発言されるなど、今後もメタバース上でのショールームを通した商品売買の機会は広がっていくことが予想されます。消費者にとってリアルな店舗だけでなくバーチャル空間でも買い物をする生活が当たり前になっていくため、企業側もVRを通したリアルな商品の販売やプロデュースに取り組む必要が生じます。
例えば
- 商品の3Dモデルには、商品やサービスの良さが伝わりやすく、企業のイメージアップにつながるデザインを採用する
- VRになじみのあるZ世代などの関心をひくようなVR空間を演出したり、コラボ企画を立てたりする
- 商品をどのように活用できるか、VRで体験できるシミュレーションを取り入れる
- メタバース上での消費者行動を調べるサービスを利用して、来店者の反応などをマーケティングに生かす
- 著作権侵害などVR空間でのトラブルが生じないようなリスクマネジメント体制を整える
といった対応が求められます。