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デジタルファッションとは|アパレル業界の新たな可能性を秘めるその理由と取り組み事例
デジタルファッションとは|アパレル業界の新たな可能性を秘めるその理由と取り組み事例

まったく新しいファッションの形として、盛り上がりを見せるデジタルファッション。アパレル業界が苦境に立たされる中、テクノロジーを駆使したデジタルファッションは業界に新しい風を吹き込みました。

今回はデジタルファッションとはどのようなものか、注目を集めている理由についても掘り下げつつ、デジタルファッションにおける世界や日本企業の取り組み等をご紹介していきます。

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デジタルファッションとは

ネット上で試着する女性

デジタルファッションとは、ゲーム、SNS、ビデオ通話などのバーチャル空間で身に着けることができる衣服や靴、バッグなどのことです。現実世界で着用するのではなく、画面内で着用したり、自分が操作するアバターに着用させたりします。

オランダの「The Fabricant(ザ・ファブリカント)」という世界初のデジタルファッションハウスが誕生して以降、欧米を中心に様々な企業が参入しています。

コロナ禍で多くのアパレルブランドが従来の製造・販売ができず苦戦した一方、デジタル空間で提供するデジタルファッションが注目されています。今後もこの分野は、メタバース(仮想空間)の発展に伴って一層盛り上がっていくと期待できます。

デジタルファッションでできること

バーチャル空間で身に着けるデジタルファッションは、既存のシステムではできなかったファッションの活用を可能にしています。例えば、ゲームなどのバーチャル空間で操作するアバターにデジタルファッションを着せれば、体型や性別など現実の身体の特徴とは関係なくファッションを楽しめます。アバターがデジタルファッションを身につけて参加するデジタルファッションショーも開催されました。

アバターではなく自分がバーチャル空間内でデジタルファッションを身に纏うことも可能です。あるデジタルファッションのブランドは、ネット上でデジタルファッションを購入すると、購入したアイテムを着用した自分の全身写真が手に入るサービスを提供しています。
ファッションブランドのバレンシアガはオンラインゲーム「フォートナイト」の中とリアルの両方で同じアイテムを販売し、オンライン上でアバターに着用させたものをリアルでも身につけられるようにしました。また、今までECサイト内で洋服を買う際には試着はできませんでしたが、デジタルファッションによってデジタル空間での試着もできるようになってきました。

このように、デジタルファッションを利用することで既存のアパレル事業の拡張と、新しい分野の開拓がされています。

デジタルファッションのメリット・デメリット

デジタルファッションの最大のメリットは、環境への負荷が少ない点です。アパレル業界では、製品の製造工程で発生する環境汚染が問題視されてきました。しかし、デジタルファッションの製造工程では二酸化炭素の排出、水質汚染、廃棄後のゴミといった問題は発生しません。さらに梱包や輸送の必要もないため、地球に優しいサステナブルなファッションの在り方を実現できます。

また、物理的な制約に縛られることなく、自由な発想によるファッションを生み出せる点もメリットです。

一方デメリットは、実際には着用することができないことが挙げられます。実際の洋服の購入を検討している際にデジタルファッションで試着をしても、素材の質感や着心地までは確認できません。そのため、デジタルファッションがリアルな衣服に完全に置き換わることはなく、ファッションの楽しみ方の一部分として発展していくと考えられます。

急成長するデジタルファッションが注目を集めている理由

デジタルファッションイメージ

デジタルファッション業界は急成長しており、ここ数年の間にも多くのブランドが参入しています。デジタルファッションが注目され、市場拡大を期待されるのには複数の理由があります。

1つめの理由は、メリットとして挙げたようにデジタルファッションがアパレル業界の抱えていた環境汚染の問題を解決することです。実際に服をつくる過程でデジタルファッションが代替できる部分を置き換えるなど、環境への取り組みとしてのデジタルファッションに注目が集まっています。

2つめは、物心ついた時からデジタル空間とリアルを行き来してきたデジタルネイティブの世代が、消費者層となったことです。デジタルネイティブ世代は、SNSやオンラインゲーム、ネット動画など、生活の中にオンライン上で過ごす時間が当然のように組み込まれています。彼らにとっては、オンライン上でしか所有できないものにお金を使うことに違和感がないと感じることも多いようです。
2035年までには、デジタルネイティブ世代がラグジュアリーファッション市場顧客のほぼ半数を占めることになるといわれており、デジタルファッションに参入することが今後のブランド存続に必要だと捉える企業が増えてきています。

さらに、NFTによってデジタルコンテンツに資産価値が担保されるようになったことで、NFTを用いたデジタルファッションに関しての注目度も高まっています。

デジタルファッション専門のブランド

デジタルファッションイメージ

元々あったアパレルブランドがデジタルファッションに参入する以外に、新たにデジタルファッション専門ブランドも誕生しています。

代表的なデジタルファッション専門ブランドを以下にいくつかご紹介します。

  • The Fabricant(ザ・ファブリカント)
  • DressX(ドレス・エックス)
  • RTFKT(アーティファクト)
  • Tribute(トリビュート)

「ザ・ファブリカント」は2018年にオランダで設立し、2019年に世界で初めてデジタルファッションのオートクチュールコレクションを発表して以降、デジタルファッション業界を牽引してきたブランドです。

その後、世界がコロナ禍に突入した2020年には、世界最大の市場規模を持つ「ドレス・エックス」、バーチャルスニーカーのブランドである「アーティファクト」、デジタルならではのデザインが注目される「トリビュート」などが一気に誕生しました。

アーティファクトは2021年12月にナイキに買収され、現在はナイキの傘下に入っています。

メタバース内で世界最大のデジタルファッションの祭典が開催

メタバースファッションショー内のエトロのショー

引用元:https://youtu.be/ZdTnYDL7cEA

2022年3月24日から27日にかけて、メタバース内で世界最大となるデジタルファッションの祭典「Metaverse Fashion Week(メタバースファッションウィーク)」が開催されました。

このファッションウィークはメタバースプラットフォームの「ディセントラランド」で開催され、観客がアバターとしてメタバース空間を自由に移動できるようになっています。60以上ものブランドが参加し、メイン会場で行われた「ETRO(エトロ)」や「DOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ)」といったブランドのショーでは、デジタルファッションを身につけたアバターたちがランウェイを歩きました。

ショーの他にもファッション×アートをテーマにした展示やショップの設置など、アバターとして参加している観客がデジタルファッションを楽しんで体験できるイベントとなりました。

日本からは、メタバース上の文化都市「Meta Tokyo(メタトーキョー)」が公式参加しました。メタトーキョーは2021年に発足したプロジェクトで、これまでも日本のカルチャーをメタバースやNFTと掛け合わせた発信をしてきています。今回のメタバースファッションウィークへの参加は、日本のデジタルファッションへの進出を象徴する出来事となりました。

日本企業のデジタルファッション取り組み事例

デジタルファッションアイテム販売ページ

引用元:https://xxxxth.com/

欧米企業を中心にデジタルファッションへの参入が盛んになる中、日本にもデジタルファッション業界へ参入している企業が出てきています。

以下の日本の企業・ブランドは、いち早くデジタルファッションを事業に取り入れています。

  • XXXX™
  • METADRIP
  • Pocket RD
  • IHUKUCHINO
  • i-BODY

それでは、各企業がどのようにデジタルファッションを事業に取り入れているのかを具体的にご紹介していきます。

XXXX™

フォックスのホームページ画像

引用元:https://xxxxth.com/

XXXX™(フォックス)は、日本初のデジタルファッションブランドです。現実世界とメタバースを行き来する時代を楽しく過ごせるようなデジタルウェアを提供しています。

2021年、NFTマーケットプレイス「OpenSea」にて、メタバース化された東京をテーマにした第1弾コレクション「ネオ東京-“人気”に潜む光と闇-」の販売を開始しました。SNSの通知に連動して点滅するバーチャルスニーカー、eスポーツチーム「狐」の公式ユニフォームシューズ、アンチアカウントを通報するネックレスなど、ストーリー性のあるデジタルウェアが展開されています。

2022年にフォックスから販売が開始された「AI-SCREAM(アイ・スクリーム)」は、AIに対するクリエイターの悲鳴をテーマにしたプロジェクトで、AIと人間が帽子のテキスタイルデザインを制作しています。購入時に「あたり」が出るとスニーカーNFTがプレゼントされるそう。こちらもOpenSeaにて購入できます。(参照元:https://xxxxth.com/play-4x/220223/

METADRIP

メタドリップのホームページ画像

引用元:https://www.metadrip.world/

日本初のデジタルファッションレーベル「1Block(ワンブロック)」を運営する1SEC(ワンセック)によって2022年にリリースするアプリが「METADRIP(メタドリップ)」です。

メタドリップを使用することで、3DCGで生成されたデジタルファッションをARで着用できるようになります。つまり、購入したNFTをただデータとして所有するだけでなく、スマホカメラを通して身につけられるようになるこということです。NFT市場が急速に拡大する中で登場したこのサービスは、NFTファッションの更なる可能性を感じさせます。

Pocket RD

ポケットアールディーのホームページ画像

引用元:https://pocket-rd.com/

Pocket RDは、現実世界と仮想世界を融合するXR技術を活用し、コミュニケーションをより表現力豊かにすることを掲げる企業です。ワンステップで簡単にオリジナルアバターを作成でき、カスタマイズもできるアバタープラットフォーム「AVATARIUM(アバタリウム)」や、ブロックチェーンを活用しデジタルデータの権利を保護するクリエイターの創作活動のためのプラットフォーム「Pocket Collection(ポケットコレクション)」といったサービスを展開しています。

2021年、Pocket RDは繊維商社の豊島株式会社と協業し「GET BOTHプロジェクト」を開始しました。このプロジェクトでは、アバタリウムが作成したアバターに着せるバーチャルファッションの服と、実際の服の同時購入をメタバースやゲーム内で楽しめるサービスが提供されます。

IHUKUCHINO

衣服知能のホームページ画像

引用元:https://ihukuchino.com/

IHUKUCHINO(衣服知能)は、最新のAIやブロックチェーンの技術を持つ企業です。

同社はECサイト内で洋服の試着できる「オンライン試着AI」というサービスを開発しました。サイト訪問者が気になる洋服を選択し自身の画像をアップロードすると、選択した洋服を着ている画像が生成されます。このサービスにより、デジタルファッションを着た自分の画像を見て商品の購入を検討するという新しいネットショッピングの形が実現していくでしょう。

オンライン試着AIは2022年4月の「第9回ファッションワールド東京」で披露され、今後、アパレル企業向けに提供予定となっています。

iBODY

アイボディのホームページ画像

引用元:https://www.i-body.co.jp/

iBODY(アイボディ)は、体型データを3D測定するボディスキャナーi-bodyを販売している企業です。

ボディスキャナーは0.5秒で全身の形状を、さらに約3秒で体重、体脂肪率、筋肉量、骨格量、内臓脂肪レベルを正確に測定します。測定結果はクラウドに保存され、利用者はスマホからいつでも確認できるシステムです。この機器はフィットネスクラブやヘルスケアの現場を中心に導入されています。

2022年アイボディは自社が持つ技術を活用し、全自動フルオーダーシャツ製造用のボディスキャナー「Auto Tailor(オートテイラー)」をローンチしました。
このサービスでは、対応店舗に置かれたオートテイラーで体型をスキャンして利用者のアバターを作成し、デジタルファッションのシャツをアバターに着付けてシャツのサイズを決定します。シャツのデータはアパレルへ転送され、利用者にぴったり合ったシャツが工場で縫い上げられる仕組みです。

次世代サステナブルファッションの可能性も

急成長のデジタルファッションは、今後も発展し続けると考えられます。リアルな服が売れなくなったといわれる一方で、今後は人々が所有しているファッションアイテムの10~15%がデジタルファッションになるとも予測されています。

現在アパレル業界の過剰生産により、環境や生態系に悪影響が及んでいることが問題視されています。デジタルファッションはこのような環境汚染をすることのない、サステナブルなファッションの形だといえます。

欧米を中心に始まったトレンドですが、日本にもいち早くデジタルファッションを事業に取り入れている企業があります。これからの時代、ブランドの消費者層はデジタルネイティブ世代が大半を占めるようになっていくため、アパレル業界だけでなく様々な業界の企業・ブランドがデジタルファッション市場へ参入していくのではないでしょうか。

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