アニメやマンガ、ドラマなどの作品の舞台となった実在の場所を訪れる「聖地巡礼」。
ファンにとっては作品世界を体感できる推し活のひとつですが、近年では地域活性化の手段としても注目されています。
本記事では、推し活の基本、聖地巡礼を徹底分解し、ファンがどのように聖地巡礼をしているか、それがもたらす経済効果などを解説していきます。
目次
聖地巡礼とは?

「聖地巡礼」とは、推し活の楽しみ方の一つで、好きな作品の舞台となったスポットに訪れることです。
もともとは宗教的な意味合いを持つ言葉でしたが、現在ではアニメやマンガの舞台となった場所、音楽や映画の撮影された場所、人物ゆかりの地など、さまざまなジャンルのファンが好きな作品に関連する場所を巡って楽しむ文化として定着しています。
ファンにとっては、推しの世界を肌で感じられる貴重な機会と言える聖地巡礼は、専門的には「コンテンツツーリズム」や「アニメツーリズム」と呼ばれることもあります。
2000年代後半から人気が高まり、今では地域活性化の手段としても注目されている、注目の活動です。

なぜ聖地巡礼をするのか:理由と魅力
聖地巡礼の最大の魅力は、推しや作品との一体感を味わえることです。
好きなキャラクターが見た風景を自分の目で見たり、推しが立った場所に同じように立ったりすることで、物語の世界がリアルに存在することを実感し、作品や推しとの距離感が縮まっていきます。
作品世界を五感で追体験できるのも大きな魅力です。
実在するスポットに立つための移動から、聖地巡礼は始まっています。
聖地に立つことだけでなく、周辺をめぐって画面やスクリーン越しに見ていた景色、本の中での描写を実際に目にしたり、そこに至るまでの間に人と交わした言葉などによっても、作品への理解や愛着をより深めることができます。
推しの世界を立体的に追体験できることに加えて、自ら能動的に動く必要のある旅という活動の持つ魅力も相まって、多くのファンが聖地巡礼を行っていると考えられます。

ファンはどのように聖地巡礼を楽しんでいるのか?
ファンはどのように聖地巡礼を楽しんでいるのでしょうか?
聖地巡礼をするファンの事前準備や、実際の行動を解説していきます。
目的地選定とルート計画
まず、巡る聖地を選びます。
作品の公式サイトやファンサイト、SNSなどで情報を収集し、訪れたい場所をリストアップします。
すべてを巡るのは難しいとしても、自分だけの目的地をピックアップすることでオリジナルの聖地巡礼マップができてきます。
ここからもう、聖地巡礼の旅は始まっているのです。
聖地に持っていく小道具や撮影シーンの確認
その他のポイントとして、「持ち物リスト」や「撮影シーン」を確認することも大切です。
聖地で写真撮影をする際、どのシーンを再現して写真を撮るのか、再現できる画角を事前にチェックしておきます。
アニメ作品であれば、そのシーンで登場人物が持っていたアイテム等を用意し、再現度の高い写真を撮ることもできます。
現地でしか手に入らない限定アイテムの情報などの事前チェックも行い、聖地巡礼の満足度をさらに高めます。
記念撮影とSNS投稿
作品のワンシーンを再現した写真を撮影し、ハッシュタグをつけて投稿することで、同じ作品やアーティストを愛するファンたちと共有できます。
実際に訪れてみないとわからない聖地の魅力を共有できる、手軽な方法として多くの人々が楽しんでいます。
また、アクリルスタンドやぬいぐるみ、手作りのフォトケース、グッズを収納したポーチなどのオリジナルグッズを撮影するのも人気です。
推しへの愛をより強く発信できる方法の1つです。
ファン同士での訪問
ファン同士での訪問も、聖地巡礼の醍醐味です。
作品やアーティストについて語り合いながら巡ることで、感動を分かち合っています。
「推し友」とは、普段の日常会話では到底語ることのできない深い会話も憚ることなく楽しむことができます。
同じ世界観を共有するファン同士で行くと、聖地巡礼という作品世界にどっぷりはまり込む旅がさらに盛り上がります。
聖地巡礼のメリット:経済効果
聖地巡礼には、さまざまなメリットがあります。
特に経済効果は、巡礼を行う側、される側、そしてコンテンツ側の三者にとって重要な意味を持ちます。
巡礼を行う側のメリット
巡礼を行う側にとっては、物語の世界に没入できる点が大きなメリットです。
画面や本の中でしか見たことがなかった景色を実際に目にすることで、作品への愛着が深まるでしょう。
また、その体験を通じて作品の感動をより深く、長く保つことができます。
聖地を訪れることで、作品世界との一体感を味わえるだけでなく、新たな観光スポットの発見にもつながり、旅行の楽しみも広がるでしょう。
巡礼される側のメリット
巡礼される側、つまり地域にとっては、新たな観光客を呼び込めるチャンスです。
これまでの観光客とは異なる層を取り込む、例えば高齢者層ばかりだった地域に10〜20代の若い層が来ることで、観光業の活性化や町興しにつながります。
また、聖地巡礼をきっかけに地域の魅力が再発見され、地域ブランディングの強化にもつながるでしょう。
地域の経済効果を見込めることが、聖地巡礼のメリットです。
コンテンツ側のメリット
コンテンツ側にとっては、聖地巡礼によってコンテンツの鮮度(トレンド)を保ち、ファンに長く愛してもらえるメリットがあります。
作品の放送や発売が終了した後も、聖地巡礼を通じて作品に興味を持ってもらうことが可能です。
また、聖地を訪れたファンの体験談がSNSなどで拡散されることで、新たなファンの獲得も期待できるでしょう。
さらに、地域と連携したイベントやオリジナルグッズ販売などを通じて、新たな収益源を確保することも可能です。
聖地巡礼は、コンテンツの寿命を延ばし、ファンとの絆をつなぐ大切な役割を果たしています。

聖地巡礼の問題点:オーバーツーリズム
一方、聖地巡礼には問題点もあります。
その代表例が「オーバーツーリズム」です。
オーバーツーリズムとは、観光地に多くの観光客が集中するあまり、地域のキャパシティを超えてしまう現象を指します。
聖地巡礼においても、この問題は無視できません。
人気作品の聖地で、観光客が急増したこと、またマナーの悪い観光客が来ることで、地元住民の生活や、自然に悪影響を及ぼす恐れがあります。
巡礼する側、される側、それぞれの対策について紹介します。
【巡礼する側】地域や施設のルールの確認・徹底
聖地となっている場所でも、撮影や立ち入りが禁止されている場所があります。
例えば、私有地や学校施設、神社仏閣の一部エリアなどは、立ち入りや撮影が制限されていることがあります。
現地で定められているルールをあらかじめ確認し、徹底することが大切です。
公式サイトや観光案内所などで情報を集めるなどして、正しいルールを調べておく必要があります。
ルールを守ることは、今訪れているファンはもちろん、次に訪れるファンも継続して聖地巡礼を楽しめる環境を維持するためにも重要です。
【巡礼する側】地元住民への配慮
聖地が住宅地に近い場合、地元住民の生活に配慮する必要があります。
聖地を訪れたファンとしてはつい興奮して大声を出したり、撮影に熱が入って周囲が見渡せなくなったりしてしまいがちですが、地元の人たちにとってはあくまで生活の場であることを忘れてはいけません。
早朝や深夜に歩き回ったりしないよう注意が必要です。
また、住宅や私有地を無断で撮影することは、プライバシーの侵害になる可能性があります。
SNSに写真を投稿する際は、写り込んだ住民の姿をぼかすなどの配慮も必要です。
【巡礼する側】環境への保護意識
聖地の中には、人が訪れることを想定していない場所も多く、ゴミ箱が設置されていないことがあります。
ゴミのポイ捨ては景観を損ねるだけでなく、自然環境にも悪影響を及ぼします。
出したゴミは必ず持ち帰るか、指定の場所に捨てるという、観光地におけるマナーを聖地巡礼の際にも遵守するよう心がけましょう。
また、自然豊かな場所が聖地になっている場合は、動植物への配慮も忘れてはいけません。
踏み荒らしや採取といった行為は厳禁です。
環境を守ることは、次に訪れるファンのためでもあります。
美しい聖地を後世に残すことも、ファンとしての重要な役割です。
【巡礼される側】持続可能な聖地巡礼の推進
聖地巡礼を単発のイベントではなく、持続可能な取り組みとして行うことで、リピーターを増やすことができます。
例えば、定期的なスタンプラリーの開催や、季節ごとの限定グッズの販売などが効果的です。
地域の特産品とのコラボ商品開発なども、長期的な誘客につながる取り組みとして注目されています。
また、ファンと地元住民との交流の場を設けることで、相互理解を深め、トラブルを未然に防ぐことができるかもしれません。
さらに、観光客の受け入れ体制を強化するために、駐車場の確保や、公共交通機関の増便、トイレの設置など、インフラ整備にも目を向ける必要があります。
地域全体で聖地巡礼を支える体制を作ることで、持続可能な観光地としての発展が期待できるでしょう。
聖地巡礼の人気スポット

聖地巡礼にはさまざまなジャンルがあります。
具体的にどのような聖地があるのか、ジャンルごとにご紹介します。
アニメ・マンガの聖地
アニメやマンガの聖地は、主にストーリーの舞台となった場所や、背景のモデルとなったスポットを指します。
また、作画のモデルになった場所を割り出し、その場を訪れるといった聖地巡礼もしばしば行われます。
人気アニメ「らき☆すた」の舞台となった埼玉県久喜市の鷲宮神社には、作品に感銘を受けた多くのファンが訪れることになり、聖地巡礼ブームの火付け役と言われるようになりました。
人気アニメ「スラムダンク」のオープニング映像に登場する、神奈川県鎌倉市・鎌倉高校前付近の踏切は有名な聖地。
七里ヶ浜の海をバックに、アニメ通りの画角を再現しに多くのファンが訪れています。
大ヒットアニメ映画「君の名は。」の印象的なラストシーンやキービジュアルにも使われた、東京都新宿区・須賀神社の階段も有名なスポットですね。
音楽・アイドルの聖地
音楽やアイドルファンの聖地巡礼も盛んです
有名なライブ会場はもちろん、PVの撮影地、さらにはアーティストの出身地や母校まで、ファンにとっては推しに関するすべての場所が聖地となり得ます。
世界的人気グループ・BTSがPV撮影などに使ったロケ地をめぐるツアーがパッケージ化されるなど、人気グループの聖地はビジネスを生み出す事例も。
また、アーティストがデビュー前に路上ライブを行っていた場所や、歌詞の中に出てくるスポットなど、少しでも推しアーティストに近づける場所を求めてファンがこれらの場所を訪れ、楽曲の世界をより身近に感じることに喜びを見出すこともあります。
下北沢で”実力のあるバンドが出演する敷居の高いライブハウス“といわれる下北沢シェルターは、エレファントカシマシ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどがアマチュア時代を過ごした場所として、バンドの聖地とされています。
また、人気ガールズバンドアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場するライブハウスのモデルにもなっており話題になりました。
ドラマや映画、歴史上の聖地
ドラマや映画のロケ地巡りも、聖地巡礼の一つです。
名シーンの撮影場所を訪れることで、作品世界を追体験し、余韻を深く味わうことが可能になります。
川口春奈さん主演ドラマ「silent」のワンシーンに登場したカフェ・ANEA CAFÉ松見坂は、ドラマ放送後予約殺到するほどの話題に。撮影に使われた席が“サイレント席”と呼ばれ聖地化しています。
また、歴史上の人物ゆかりの地を訪れるのも、一種の聖地巡礼と捉えられるでしょう。
大河ドラマの舞台となった城や古戦場跡地などは、歴史ファンの聖地として多くの人が訪れる人気スポットとなっています。
いにしえの人々に思いを馳せながら古刹などの史跡を巡る聖地巡礼は、昔から行われていたと考えることができそうです。
聖地巡礼×ビジネスを成功させるには
聖地巡礼は、巡礼する側と、巡礼される側、双方の協力なくして成功しません。
以下のポイントを押さえることで、より満足度の高い聖地巡礼が実現できるでしょう。
作品の世界観の維持
聖地巡礼するファンを楽しませるためには、作品の世界観を維持する必要があります。
ファンの作品への愛が地域への興味につながっているため、作品の世界観を理解し、それを反映した取り組みを行うことが大切です。
例えば、作品に登場する建物や風景をできる限り保存したり、作中のセリフなどを取り入れた案内板を設置したりするなどの工夫が考えられます。
ライセンス契約の締結
作品に関連したオリジナルグッズを販売することは、ファンの満足度を高め、地域経済にも貢献します。
しかし、これらのオリジナルグッズを販売するには、著作権者とのライセンス契約が欠かせません。
適切なライセンス契約を結ぶことで、公式に認められたグッズを提供でき、より多くのファンを惹きつけることができます。
観光資源としての価値向上の取り組みを実施
聖地巡礼では、その場所そのものが観光資源となります。
環境を整備してアクセスしやすくしたり、巡礼マップを作成して回遊しやすくしたりすることで、観光資源としての価値が向上します。
また、作品に関連したイベントの開催や、聖地ならではの体験プログラムの提供なども、価値向上につながる取り組みと言えるでしょう。
企業、行政、地元との連携
聖地となっている地域を活性化させるためには、企業、行政、地元住民との連携が欠かせません。
例えば、公共施設へのイベント案内チラシを掲示したり、市区町村の公式SNSで聖地巡礼に関する情報発信をしたりすることなどが考えられます。
また、地元住民との連携は、トラブルを回避しながら巡礼者の受け入れをスムーズに行うために重要です。
地元住民の理解と協力を得ることで、経済効果も得られやすく、持続可能な聖地巡礼につながっていくでしょう。

聖地巡礼×ビジネスの注目事例
聖地巡礼の中でも特に注目されているスポットを紹介します。
エヴァンゲリオン×箱根
「新世紀エヴァンゲリオン」の舞台である第3新東京市のモデルとされる箱根は、多くのファンが訪れる聖地です。
箱根湯本駅ではエヴァンゲリオンをモチーフにした装飾が施されており、2020年には大涌谷駅入り口横などにキャラクターの等身大フィギュアも展示されました。
また、「箱根湯本 えゔぁ屋」というエヴァンゲリオンオフィシャルショップがあり、限定グッズの販売や関連イベントが開催されています。
こち亀×葛飾区
「こちら葛飾区亀有公園前派出所(通称、こち亀)」の舞台である東京都葛飾区は、作品のキャラクターを活用した街づくりを行っています。
亀有駅前には主人公・両津勘吉の銅像が設置され、駅周辺には他のキャラクターたちの銅像も点在しています。
2025年3月には「こち亀記念館」という施設がオープン予定で、さらなる聖地巡礼者の増加が期待されています。
ラブライブ!サンシャイン!!×函館
「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台の一つである函館市では、作品と連携した観光プロモーションを展開しています。
作品のロケ地をまとめたマップ情報を配布していたり、「函館 クリスマス編」の旅のしおりを配布したり(※現在は終了)といった活動が行われました。
また、作中に登場するスポットを公式観光サイトで紹介するなど、ファンが楽しめる取り組みが行われています。
まとめ
本記事では、今さら聞けない推し活の基本中の基本「聖地巡礼」について、さまざまな事例をまじえて解説しました。
聖地巡礼は、ファンと作品(コンテンツ)、そして地域を結ぶ機会となり、適切に行われれば大きな経済効果を生み出せるかもしれません。
トランスでは、推し活をするファンの心理への深い知見を蓄えており、ファンに喜ばれるマーケティング活動を行っています。
クライアント企業のみなさまの目的に合わせた企画提案を得意としています。
オリジナルグッズをはじめとした自社の商品やサービス、プロモーションに関するお悩みをお聞かせください。
素案レベルであっても、ご相談内容に合わせて立案し、実現させることが可能です。
どうぞお気軽にご相談ください。
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藍生エイト
聖地巡礼は推し活の醍醐味です。
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公開日:
株式会社トランス