地方創生のエンタメ活用事例|内閣府が推進する地方創生SDGsも紹介
地方創生のエンタメ活用事例|内閣府が推進する地方創生SDGsも紹介

全国的な地方創生の流れの中で、「地方創生SDGs」という考え方が出てきています。またさまざまな地方創生の取り組みが行われている中で、近年はエンタメを活用している実例も数多く出てきています。どちらも耳にする機会はあるかもしれませんが、具体的な内容までは分かりにくいのではないでしょうか。

そこでこの記事では、地方創生SDGsとエンタメ活用について事例を交えてご紹介します。

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内閣府が推進する地方創生SDGsとは

地方創SDGs、地方創生SDGsとは

引用元:https://future-city.go.jp/sdgs/

「地方創生SDGs」とは、その名の通りSDGsを推進することで地方創生を実現するという考え方で、政府が後押しをしています。地方創生SDGsを理解するために、まずは「地方創生」「SDGs」それぞれの意味を確認しておきましょう。

「地方創生」は日本全体の活力を上げるために、地理的な課題と人口問題の2つを解決することです。地理的な課題は、東京一極集中の是正と、各地方の特徴を活かして住みよい環境を確保すること。人口問題は、少子高齢化への対応と、人口減少への歯止めをかけることがポイントだと言えるでしょう。

「SDGs」は、持続可能でよりよい世界を目指す国際指標です。17のゴールと169のターゲットから構成されており、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。

内閣府による地方創生SDGsのサイトでは、「地方公共団体によるSDGsの達成に向けた取組は、地方創生の実現に資するもの」だとされています。政府としては「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」を選定・支援し、成功事例を普及展開することで地方創生を深化させるとしています。

地方創生SDGsが必要とされる理由

地方創生SDGsが必要とされる理由としては、地方において人口・とくに労働人口が減少しており、それに伴って地域経済が活力を失っていることが挙げられます。

地方創生の考え方は「地方を取り残さない」とも言え、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念と高い親和性があります。そのため17個あるSDGsの目標の中には、福祉や教育・産業の振興やまちづくりに関するものもあり、地方創生とつながるものが多くあります。このような事からSDGsに取り組むことで結果的に地域を活性化させることが可能になります。

内閣府は「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」設置で支援

内閣府は「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置して、広範なステークホルダーとのパートナーシップを深めるためのコラボやタイアップなどを支援しています。プラットフォームにはさまざまな企業や団体が続々と登録しています。

地方自治体が単独で課題を解決するのではなく、企業などと連携することによって地方創生の課題解決をより促進できることが期待されます。プラットフォームに登録している企業の中には、VTuberの事務所「ホロライブ」を運営する「カバー」もあります。同社をはじめ、エンタメ業界とのコラボも地方創生では進められています。

地方創生の取り組みの1つとしてのエンタメ活用

地方創SDGs、エンタメ、地方創生

地方創生の取り組みは、SDGsの指標策定やプラットフォームが設置される前からいろいろな形で行われてきました。中でも近年、さまざまな方法のうちアニメ・映画・マンガ・Vtuberなどエンタメを活用した事例が増えてきています。

例を挙げると、映画・アニメなどのファンが舞台となった土地を訪れることを「聖地巡礼」と呼びますが、地方創生の手段として自治体発信で聖地巡礼をPRする事例があります。そのほか、オリジナルアニメやキャラクターを制作する例もあります。

エンタメを活用した地方創生の取り組み事例8つ

アニメ・映画・マンガ・Vtuberなどエンタメを活用した地方創生の取り組みとしては、下記のような手法があげられます。

  • 映画やアニメの舞台となった事で観光誘致
  • コラボしたご当地キャラクターでPR
  • 地方創生目的にアニメ制作
  • 地方創生寄付がついた商品販売
  • Vtuberとのタイアップ

これらの手法の具体的な事例を紹介します。

【映画やアニメの舞台となった事で観光誘致】岐阜県内×聖地巡礼

岐阜県内では、アニメの舞台となった自治体がアニメの聖地を観光資源として地方創生に結び付けています。2016年に公開され話題となったアニメの映画「君の名は。」の舞台は岐阜県飛騨市でした。ほかにも岐阜県内が舞台となっているアニメはいくつもあり、多数のファンが「聖地巡礼」に訪れます。県内では聖地巡礼を促進する取り組みが行われています。

たとえば「君の名は。」の飛騨市・「氷菓」の高山市・「聲の形」の大垣市・「僕らはみんな河合荘」の岐阜市は、公式観光サイトやポータルサイトで聖地を紹介し、実際の写真と劇中の風景を比較したり、観光で回るコースを例示したりしています。聖地をまとめた地図を用意しているほかGoogleマップでマッピングもするなど、巡礼の利便性を高める工夫も行っています。岐阜市はロケの誘致・ロケツーリズムにも積極的です。

岐阜県が舞台となった3作が公開された2016年には、岐阜県の聖地巡礼者数は103万人、253億円の経済効果があったという試算もあります(「十六総合研究所」調べ)。飛騨市の場合、「君の名は。」の公開同年には3万6千人が訪問したといいます。2017年には県下8自治体で「ぎふアニメ聖地連合」が発足、自治体として連携しながら聖地巡礼による観光客増に取り組んでいます。

【映画やアニメの舞台となった事で観光誘致】箱根町×エヴァンゲリオン

神奈川県の箱根町は、テレビ・映画で一大センセーションを起こした「エヴァンゲリオン」の「第3新東京市」のモデルとなりました。継続的に聖地巡礼の施策を行いつつ、大きなキャンペーンを行うこともあります。直近では2020年に「エヴァンゲリオン×箱根2020 MEET EVANGELION IN HAKONE」を行っています。「箱根史上最大のエヴァンゲリオン化」とも言われた大規模なイベントでした。

現在でもそのときの施策を一部継続して行っています。具体的には、駅・バスなどのラッピングがあります。そのほか、箱根湯本駅にはエヴァンゲリオングッズのお土産屋さん「えゔぁ屋」が営業中です。

過去には「箱根補完マップ」という聖地のマップを配布しており、外国人向けに英語版も作られました。

箱根町のほか、小田急箱根ホールディングスと藤田観光、箱根小涌園ユネッサンなどが参加。具体的な訪問者数などは示されていないようですが、数多くのファンが箱根を訪れていることは間違いありません。

特集ページ

【コラボしたご当地キャラクターでPR】三重県伊賀市×マイメロディ

三重県の伊賀市ではサンリオと提携、同社のキャラクター「マイメロディ」が市の応援キャラクターとなっています。乳がん検診の受診券・コロナ感染対策店のステッカーなど、市内での情報発信に登場しています。そのほか、限定ぬいぐるみがふるさと納税の返礼品にもなっています。

2021年4月からの取り組みで比較的新しく、また市内での情報発信に活用されているため効果の数値化が難しい部分はあります。しかし同市では持続可能なまちづくりの一環としてシティプロモーションに取り組んでおり、再生計画のテーマの1つに『 “誇れる伊賀市”、“選ばれる伊賀市”へ 』があります。キャラクターも地方創生の具体的な方策の1つだと言えるでしょう。

【地方創生目的にアニメ制作】福島県いわき市「お湯に願いを」

福島県のいわき市では、「いわきアカデミア推進協議会」の「若者による映像コンテンツ制作・発信」事業として「お湯に願いを」という短編アニメーションを制作しました。

「いわきアカデミア推進協議会」はいわき商工会議所・地元大学・企業による団体です。地元の若者を育成していわきの魅力を発信する内容のアニメを制作するため、2年がかりで、アニメ制作会社ガイナ協力の元、プロによる講座を20回に及んで実施。令和2年度にシナリオ制作、3年度にそのアニメーション化を行いました。地元の高校生・大学生約20人がキャラクターデザイン・シナリオ作成・作画・編集を担当し、作品が完成。2022年4月末に完成の報告が行われました。

まだ完成したばかりで、今後動画投稿サイトで映像を公開するなどして活用していく予定です。

イベント紹介ページ

【地方創生目的にアニメ制作】岐阜県多治見市「やくも」

「やくならマグカップも」(通称「やくも」)は、制作の段階から岐阜県多治見市が全面協力したアニメーションです。多治見市は美濃焼の本場で、多治見市を舞台に高校生が陶芸にのめり込むストーリーです。

もともとは多治見市に本社を置く企業が多治見の振興策として構想をスタート、2012年にフリーコミック化されました。当初は地元だけのローカルな存在だったといいます。その後コミックのファンだったというアニメーション制作会社の社員の提案が発端となり、多治見市の全面協力のもとテレビアニメとして制作されます。

地域の盛り上げ・アニメや実写の制作にまで市が関わった珍しい例です。放送も、前半15分はアニメ・後半15分は声優が当地で陶芸体験などをロケした実写版となっており、地域創生という目的が色濃く反映されています。

特設ページ

【地方創生寄付がついた商品販売】ASTROBOY × JAPAN(ご当地アトム)NFT

鳥取県が「鉄腕アトム」とタイアップ、ご当地NFTカードで地域活性化を目指しています。地方自治体とNFTゲームのコラボは日本初。手塚プロダクション・JTBとJCBの合弁会社「(株)J&J事業創造・ブロックチェーンを扱うNOBORDER.z FZEによる共同プロジェクトの第一弾です。

コロナ禍で打撃を受けた地域経済と国内観光マーケットの回復・支援を目的としたプロジェクトです。鳥取県内各地が背景に描かれた鉄腕アトムのご当地NFTカードを、世界の市場に向けて発表していきます。現在はコレクション機能だけですが、今後はメタバースのゲームで遊べるようになる予定です。鳥取県は宇宙産業の飛躍への取り組みを進め、「星取県」としてブランディングを行っていきます。

先行募集2000枚に対して24700人から申し込みがありました。欧米・中国からの申し込みが多かったといい、インバウンドも期待されます。今年2022年5月に販売開始されたサービスなので、これからに期待したいところです。

特設ページ

【Vtuberとのタイアップ】ホロ伊豆ム:ホロライブ×箱根・伊豆

「ホロ伊豆ム」は、Vtuberのグループ「ホロライブ」と神奈川県・伊豆のタイアップによる旅行イベントです。ホロライブは「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」にも参加している企業「カバー」が運営しています。イベントは2021年1月16日から始まり、当初の予定より2か月ほど延長され6月9日まで行われました。

ホロライブのメンバー27人のラッピングトレインは、鉄道ファンも巻き込んだ目玉企画でした。そのほか、メンバーと一緒に旅行を体験できる観光名所で呼び出せる限定ボイスや、旅行ルート内に設置されたフォトスポットで一緒に写真を撮れるといった企画も実施。また限定グッズ販売のほか、宿泊プランにはプレゼントも用意されていました。

近畿日本ツーリスト、ホロライブを運営するカバー、伊豆箱根鉄道によるものです。推奨のハッシュタグをつけたSNSへの投稿が多数見られ、集客やイメージアップに一役買ったと言えるでしょう。

特設ページ

【Vtuberとのタイアップ】雪花ラミィ×茨城県水戸市(明利酒類)

「ラミィの日本酒づくりプロジェクト」と称し、ホロライブ所属のVtuber「雪花ラミィ」が茨城県水戸市の酒造メーカー「明利酒類」の全面協力により大吟醸酒「雪夜月」を開発・発売しました。

明利酒類は、日本酒「副将軍」・梅酒「百年梅酒」など各種コンクールでの受賞歴もある実力派の酒造メーカーです。その前身は安政年間に遡ります。雪花ラミィはお酒が好きで、原料や酵母選びからチャレンジ。ラベルのイラストやパッケージまで彼女の世界観が反映されています。

「雪夜月」Season1は、販売開始1時間で売り切れとなる過熱ぶり。Season2もすでに売り切れています。同酒は2022年には世界最大規模のワイン・清酒品評会「IWC2022」でブロンズメダルを受賞しました。新たに開発した、「雪夜月」を使った「琥珀糖」もすぐに売り切れになっています。

明利種類では、ほかにもホロライブ3期生の「白銀ノエル」とのコラボによるクラフトジン「ノエルのポーション」も発表。そちらも完売しています。ホロライブとのコラボは全国のファンに購入してもらうきっかけとなっており、地方の企業として地域の活性化の力となっています。

商品ページ

地方創生にエンタメ活用を進めるための取り組みもある

地方創生にエンタメ活用を進めるための取り組みもあります。ここでは、3つの取り組みについて概略をまとめます。

アニメ×異業種コラボ表彰イベント「京都アニものづくりアワード」

2017年にスタートした、アニメを活用した優れたコラボレーションやタイアップの取り組みを顕彰するアワードです。2021年に地方創生部門を創設。同年の金賞は上記「エヴァンゲリオン×箱根2020 MEET EVANGELION IN HAKONE」、銀賞も上記「やくならマグカップも」を活用した地域振興事業となっています。

アニメツーリズム協会

2018年より毎年「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」を選定し、グッズ・サービス・イベントの創出も行っています。岐阜県の聖地巡礼の事例で紹介した岐阜市・高山市・多治見市も、過去に聖地として選定されました。アニメツーリズムを推進し、インバウントの増大・地域創生への貢献を図っています。

アニメふるさと納税

ふるさと納税の仕組みを使って、アニメの聖地に寄付できるサービスです。2021年10月にリリース。寄付金は自治体のアニメ聖地推進事業に活用され、寄付した側は寄付額に応じたオリジナルの返礼品が受け取れます。サービスリリース第1弾となった2つの自治体は合わせて2000万円強を集めており、それぞれ聖地巡礼用のマップ作成やPR動画作成に活用しています。

まとめ

持続可能な地方社会を実現するために、エンタメが活用されている実例が多くありました。アニメなどの舞台となっている地域の自治体はもちろん、そうでなくてもコラボといった形でエンタメを活用できます。ヒントになる事例もあったのではないでしょうか。

トランスでは、「コラボタイアップ企画コーディネート」のサービスを行っており、エンタメ業界とのコラボのコーディネートも可能です。また持続可能な社会づくりには、環境面ではエシカル消費もかかわってきます。エシカル消費向けのサービス「プラスエシカル」も提供しています。ご興味がおありでしたら、お気軽にお問い合わせください。

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